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「ちょ、あ、んっ、ごめんなさ、ごめ、いいま、ひっ、言いますからとめ、とめてくださ、」
「言ったらやめてあげるって伝えたよね?ほら、つらいなら早く言いなよ」
「や、んっ、んん、っA!、A、です、!」
その瞬間、私に快楽を与えていたソレが動きを止めた。
負けたような気がしてならない。この人の言う通りにしてしまったことが少し悔しい。
呼吸が苦しかった。こんな感覚は初めてだ。
「Aちゃんって言うのだね、いい名前だ。」
「あ、りがとう、ござい、ます、」
呼吸が整わないせいでうまく話せない。やっとの事でお礼を言ったあとも深い呼吸を何度か繰り返し、息が整うのを待ってくれた。
「あの、貴方の名前は教えてくれないんですか?」
「ああ、ごめんね。私は太宰、太宰治だよ。」
太宰さん、か。会ったばかりの人の名前を噛み締めるように胸中に仕舞い、短い時間で一気に体力を消費した体を少し休める。
大きな深呼吸をひとつしたところで話しかけられた。
「ねえ、もう今夜は終わりとか思ってないよね?」
「えっ、思ってました…けど、」
「馬鹿なのかい?あんな数分で終わるわけないだろう、まったく。君の異能は優秀なようだね。」
「あっ、え、その今夜はもう、」
「お金はいいから終わりにしてください、という事なら聞けないよ。」
「あ、やだ、だってもう、」
「却説、今夜はよろしくお願いします、…だっけ?」
先程の自分のセリフを繰り返され、顔に熱が登った。なんて恥ずかしいことを言ったんだろう、私。馬鹿じゃないの。と小さな後悔と、この人に声を掛けたことに対する後悔と、いろんな後悔が波のように押し寄せてきた。
さっきから私の目を覆っている黒いネクタイが少しずれて、太宰さんの顔を覗き見ることができた。
小さい隙間から必死に見ていると、舌なめずりをした彼が耳元まできて
_つらかったら言ってね。
と耳を甘く噛んだ。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時