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本当はAちゃんより早く起きるつもりだった。昨夜は長かったし仕方ない、と思いつつシャワールームに向かう彼女を薄目で見送る。
どうしよう、と時間を見るとまだ五時前だ。
入っていたメールを返して、二度寝しよう。と目を閉じていると、こちらに向かってくる足音が耳に届いた。
シャワーだけ浴びてきたのだろうか。ドライアーの音はしなかったからきっと髪は濡れたままなのだろう。目を瞑ったまま推測する。
その間にも足音はどんどん近付いてきて、私のすぐ側まで来た。何をされるんだ、と少し警戒していると、柔らかく暖かい手が頬に触れた。
そして唇にも、何かが触れた。
考えるまでもなくそれの正体はわかった。すぐに離れるだろう、と思ったが思いのほか長い。
頭を抑えてディープキスに持ち込んでやろう、とも考えたがやめた。
私たちは恋人ではない。
行為中のキスは、興奮を高める。でも、今それをする必要はない。所詮、お金で繋がっているだけだ。
寝起きのはずの頭は今日も回る。こんなこと、考えたくないし考える必要もない。
唇が離れるタイミングで目を開いた。目が合うと、驚いたように目を見開いた彼女が挨拶をした。私もそれにおはよう、と返して微笑んだ。
何故かこの子に作り笑いを見せることが嫌だった。いつも寝る女性には、表情を見られるのが嫌で作り笑いをしていたのに。
おかしいな、と思った。
嫌だ、と思う気持ちに反していつも通り動く顔が憎かった。だが、それも、彼女に口付けされた顔だ、と思えばどうでもよくなった。
本当に、何に惹かれたのだろう。
ただ、好きだ、とは思った。
変な気持ちに気が付いてしまい、自分が一方的に気まずくなった所で声を掛けた。
「昨日のコンビニまで送っていくよ、そろそろ出ようか。」
「はい、」
少し寂しそうに目を伏せたその表情に期待を抱いた。
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作者名：こめこ | 作成日時：2018年4月28日 22時
