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夜のうちに雨でも降ったのだろうか。普段より色を濃くしたコンクリートが目に入った。自分の踏んだ地面から飛沫があがる。

私はあのあと、車で送ってもらって 、お金まで受け取ってしまった。今回は貰わない、と自分の中では決めていたから、お断りはしたのだ。

私から無理を言ったので結構です、と。

だけど、聞き入れては貰えなくて、少し前に見たその財布からまたしても、五枚のそれを取り出したのだった。

半ば強引にそれを握らせて、彼は行っしまった。また、連絡してね、といつも通り微笑を浮かべたまま行ってしまったのだ。

お金を渡される時に手に触れられて、何故か酷く心臓が痛くなった。鼓動が早くなって、聞こえるくらいの大きな音を立て始めたそれに、働きすぎだ、と心の中で声を掛けたが、それは彼が立ち去って暫く経つまで治らなかった。

…何してるんだろ、私。

これじゃあ、まるで、彼のことを好きになったみたいじゃない。

そんなこと、ダメ、ここ一週間にも満たない間に彼には沢山お金を貰ったから、罪悪感で緊張しただけ。

ホテルを出る時に寂しいと感じたのも、小学校の頃の短い恋の記憶に似ているのも、これは、


「違う、の…」


認めることが嫌なのではない。ただ、こんなことばかりしている汚い身で望めるようなことではない、わきまえているだけ。


呟きながら近くにあった濡れていないベンチに腰を下ろした。貰ったお金をどうしても使いたくなくて、今日は野宿でもいい、とさえ思った。

ふと視線を落とすと、目に留まる少し遠い場所になめくじがいた。ぬかるんだ地面はさぞ這い心地がいいのね。

意外にも素早く感じる速度でそれは視界から消えた。



…今夜、どこで寝ようかな。

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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時

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