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着く頃にはもうクタクタだった。この人は本当に意地悪だ。着いてからやけにゆっくりと降りる準備を始めて、自分のシートベルトはもちろん、私のシートベルトまで丁寧に外し終えてからやっとスイッチを切ってくれた。
荒げた息をそのままに少し睨んだが、意にも介さず、噛んだままの布を回収された。
「行こうか」
「はい、」
正直今夜、大丈夫かな、という思いしかなかった。たった三十分で私をこんなにしてしまう人に一晩中抱かれるのだ。不安が募る。
「ふふ、心配しなくても優しくしてあげるよ」
「ほんとですか?」
「ああ、本当さ」
それまでも見透かしたようなタイミングで私をなだめ、部屋まで丁寧にエスコートしてくれる。声にこそ出さないが、どれだけ女性慣れしてるの、と驚いてしまう。
本当に高級そうなホテルだ。料金は見せてくれなかった。部屋のベットは今まで見た事のないくらい大きい。荷物を置く場所も用意され、そこでさえ洋風な装飾が施されている。太宰さんってお金持ちなのかな、こんな高いところ、恋人と来なくていいのかな。
そういえば、恋人っているのかな。そりゃ、いるよね。こんな素敵な人にいないわけがない。
…大丈夫なのかな、こんなことして。
今日は色々、不安だ。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時