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“これはだれもがしってるうた”

「やめて」

“だれもがわすれてしまったうた”

「やめて、お願い、…お願いよ、父様」


真っ暗闇の中、不思議なうたと女の子の泣き声が聞こえた。はっと目を開けると、私の足元で白い少女​───Aが蹲って泣いている。その視線は私にでは無く遥か向こう側に注がれていた。つられてそちらを見る。男が立っていた。男と言っても影しか見えず、誰なのかは全く分からない。


「平和を見守るなんて私には無理なのだわ、父様。長く生きられる体もいらない、私は英雄になんてなりたくない!お願い、父様…私を普通に死なせて欲しいだけなの、お願い…」


娘と思われる少女の涙ながらの呼びかけに、男は1度だけ振り返った。だが手をひとつ振っただけで、男はそのまま歩いていく。少女はその姿を見て泣き崩れた。


「…もし。なぜあなたは泣いているのです?」


突然背後から声がして、私もAも驚いて飛び上がりながら振り返る。立っていたのは高校生くらいの、長い金髪を腰まで垂らした女の子。だがその服は修道服を着ている。慈愛に満ちたその微笑みは足元にいる本物のAに注がれていて、まるで私は見えていないよう。


「父が私を死なせてくれないの。私にこの世界の末路を見届けろって、救えって言って、長く生きられる体にしてしまったの。でも私にそんな力はないし、この世界は争いに満ちてる。怖いの。怖くて、逃げたくて、でもそれすらとできないの。…どうしようも、なくて…」


ぼろぼろと涙を零しながらAは修道服の女の子に縋る。女の子はそっと屈み、Aのことを抱きしめた。


「ならば私がその役目を代わりましょう。迷える民を正しい方向に導く…ええ、生前と何も変わりません。わたしなら、あなたのお役に立てるやもしれない」


それだけ言い残し、修道服の女の子は男が歩いていった方向へと行ってしまった。そしてその姿が帰ってくることはなく、また新たな少女が私たちの背後に立っていた。


「ええ、分かりました」

「彼らを救えばいいのですね。お任せ下さい」

「ああ、可哀想な子。私が共に重荷を背負いましょう」


幾人も、幾人も、同じようなことを言って最初の少女と同じ方向へと消えていく。そして誰も戻っては来ない。そして1人消える度新しい少女が現れるのだ。


「…ああ、そうだったの。そういうことだったのね、父様」


彼女が急に立ち上がった。うつろな顔に僅かに諦めのような笑顔を浮かべて。

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ぱーぷる姫(プロフ) - 6時間ぶっ続けで読み続けました。どうかハッピエンドに! (7月5日 6時) (レス) @page44 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
夢優(プロフ) - 初コメ失礼致します。陰ながらずっと応援しておりました。同じくカカシ先生が好きな一人です。更新される毎に面白く、次のお話が楽しみでいます。今後の展開楽しみです。Twitterの方にフォロー申請させて頂きました。これからも応援しております。 (2022年8月19日 12時) (レス) id: 8b891f9a28 (このIDを非表示/違反報告)
Luna - 1作品目から秒で読み終わってしまった、、楽しみにしてます! (2022年8月1日 23時) (レス) @page47 id: c3b541dbab (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新嬉しいです!やっぱりこれは神作品 いつまでも応援しています!! (2022年7月6日 0時) (レス) @page44 id: ef698603e3 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - あああああああああああああおわってしまったぁぁぁぁぁぁあ (2022年6月20日 3時) (レス) @page40 id: 9e745c4531 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月27日 22時

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