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先生は呆れたと言いたげに思いっきりため息を吐いて私の肩から手を離した。
「…絶対後で話は聞くぞ」
『分かってますよ』
先生が封邪法印の準備をし始めるのを横目に、少し離れた場所に座り込んだ。さっき無理やり押さえ込んだ目眩が思い出したように返ってきてこめかみを指で抑える。
『(…とにかく手の傷の止血…と、情報の整理…)』
ズキズキする頭でも何とかそれだけは考えられた。もう一度グローブを外して傷口を見る。左手の甲の真ん中が切れ味のいいナイフで切られたかのようにぱっくりと割れていた。何もしていないはずなのにこれだけ深い傷ができてるということは…
『(未来が変わった、しかないか)』
本来あの試合中に呪印が暴走し、サスケは歩くのが困難になるほど疲弊して帰ってくるはずだった。だが周りやサスケの様子を見る限り暴走したようには見えない。そして、仮に暴走しなかったとしたらこの傷の説明もつく。
ということは私の応急処置はそれなりの効果を発揮したのだろう。まさかこんな上手くいくとは自分でも思ってなかったけど、まあサスケのダメージを肩代わりできてるなら儲けもの。仙人化するのも防げたら言うことなしだが、そうなれば大蛇丸だって呪印を弄られたことに気づ、く……
『(あ)』
そこまで考えてピタリと思考を止めて瞼をあげる。やってしまった。サスケの異変と自分の体調に気を取られすぎていた。いちばん大事で大変な、すぐ先の未来をまだ忠告できていなかった。
『せん_________』
慌てて封印を終えた先生の元へ駆け寄ろうとするが、1歩踏み出す前に私の足はピタリと止まった。視線を自分の顎下へと落とす。鈍く光る黒い凶器は私の頸動脈を切り裂かんとしていた。あと一歩でも前に踏み出していれば死んでいただろう。
「…中々やるようね。カブトを下したのは、あの子の慢心やまぐれの類じゃなかったってことかしら」
その声にふりかえったカカシ先生は私を見、それから私にクナイを突きつける人物を見て目を見開いた。
「…大蛇丸……!」
「お久しぶりねカカシくん。でも悪いけど君に用はないのよ。あるのは君の後ろの子と…」
ひた、と首筋に冷たいものが当たり、嫌な汗が背中を伝っていく。再不斬の時とは比にならない程の殺気に明確な「死」が連想されて足が震え始める。
「君の可愛いお弟子さんだけ。…動けばこの子の命がどうなるかくらい、上忍の君なら言わなくても分かるわね」
「!」
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ぱーぷる姫(プロフ) - 6時間ぶっ続けで読み続けました。どうかハッピエンドに! (7月5日 6時) (レス) @page44 id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
夢優(プロフ) - 初コメ失礼致します。陰ながらずっと応援しておりました。同じくカカシ先生が好きな一人です。更新される毎に面白く、次のお話が楽しみでいます。今後の展開楽しみです。Twitterの方にフォロー申請させて頂きました。これからも応援しております。 (2022年8月19日 12時) (レス) id: 8b891f9a28 (このIDを非表示/違反報告)
Luna - 1作品目から秒で読み終わってしまった、、楽しみにしてます! (2022年8月1日 23時) (レス) @page47 id: c3b541dbab (このIDを非表示/違反報告)
巴(プロフ) - 更新嬉しいです!やっぱりこれは神作品 いつまでも応援しています!! (2022年7月6日 0時) (レス) @page44 id: ef698603e3 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - あああああああああああああおわってしまったぁぁぁぁぁぁあ (2022年6月20日 3時) (レス) @page40 id: 9e745c4531 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宙 | 作成日時:2022年1月27日 22時