Letter24 ページ24
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彼の隣に女がいなくて安心した私は馬鹿なのか?
どうしようもないアホだ。殴りたい。
ころちゃんを振った理由を思い出せ、私。
彼の幸せのために、私を忘れてもらうために、したことでしょ?
その後るぅちゃんがすっごく不機嫌だったのは言うまでもなく。
『ころちゃ、…あ、るぅちゃん、』
挙句の果てに名前を呼び間違える始末。
『この服とかはどう?るぅちゃん絶対黄色似合うよ』
「…たしかに素敵な色ですね!」
あぁ、今無理して笑ってるでしょ。
どこかで挽回しないと。
「次はAの僕が選びます!」
忙しなく店を周りにまわって彼は1着の服を持ってきた。
「たまにはどうですか?こういうボーイッシュなのも!」
『あぁ!ころちゃんがよく私に……』
────選んでくれた系統と、似てるの。
なんて言えなくて変なところで切ってしまう。
「…やっぱAはこっちの女の子らしいのがいいです」
そう言って私はサラリと彼に奢られてしまう。
手が繋がれているが、無言のまま。
寂しく見える街を歩く。
『…るぅちゃん、ごめんね、なんか今日ころちゃんの話ばかり……むぐぅ』
「……これ以上彼奴の名前出さないでください」
"妬いちゃうから"
ぼっと私の頬が火照る。
『ぁああっそそ、そっか!ごめんね!もう大人だし結婚してるからそんな嫉妬されるとは……!』
明らかに落ち着きのない私は目を泳がせながら言う。
本当は嫉妬してるんじゃないか薄々気づいてたから。
「僕の気持ち分かってよ…」
道角で人から隠れてキスを落とす。
「…元彼のこと見て少し頬が赤くなってる奥さんを見て平気な男いないです。僕だって余裕あるわけじゃないんですよ?」
……結婚という形は拘束ではないから。
Aが絶対にずっと僕のものって訳では無いから。
『私とるぅちゃん、やっぱ似てる』
……結婚を結婚と捉えないところが。
「とりあえず!ころちゃんのとこ戻っちゃダメですよ……?」
拗ねた子供みたいに私に抱きつく。
『そんな事しないよ』
「でもまだころちゃんの事見るとドキドキするんでしょ……?」
うっ、そんなこと
ない、とはっきり言えない自分もいた。
「僕がAをドキドキさせます。おかしくなるまで愛します」
そんな臭いセリフがよく吐けるものだ。
だから、彼奴の事なんか忘れて…
消え入りそうな彼の声は、私の胸を締め付けるのには十分過ぎた。
西日が私たちを刺していく。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時