戦国BASARA〜愛しき花よ、切なき花よ〜【希望の道】

３９４．豊臣崩壊、嵐の中の愛 ページ15

秀吉「いかなる形にせよ、豊臣の家は残るのであろう？それで良いではないか」

A「父上…」

秀吉「お前に一つだけ言っておく。我が残したいのは、城でも家でもない。豊臣の心だ。城に出るなら出るで良いではないか。お前の居る場所、そこがすなわち豊臣の城なのだ。お前なら分かろう」


　娘の頭から愛おしげに頬に触れる秀吉。Aは添えられた手を取る。


A「…はい」

秀吉「お前ばかり散々迷惑をかけ、寂しい思いをさせてしまった。許せとは言わぬ…。だがお前を愛しているのは、まことだ。それだけは信じてほしい」

A「…勿論です。私も、父上を愛しています。母上も、半兵衛も」


　二人に顔を向け、微笑むA。ねねは娘の傍に寄った。


ねね「A、これから先、あなたを踏みにじる者が現れると思います。どんなに恥ずかしくてもいい。生きる事が大事なの。女子(おなご)のもう一つの戦は、生きる事。その心得をしっかりと胸に焼きつけなさい」


　半兵衛も、Aに近づいた。


半兵衛「人は皆、いつかは必ず死ぬ…。だからこそ、死にがいのある生き方をしなければならない。この世に生まれたからには、己の命を使い切らないといけない。使い切って、生涯を終えるんだ」

A「父上…母上、半兵衛…ッ」


　今にも三人に縋りつきそうな泣き面をするA。


ねね「A、あなたにも幸せになってほしいの。好きな人と結婚して、一緒に手を携えて歩む人並みの幸せを味わってほしい。人生は、泣いても笑っても、たった一度きりなんだから」

半兵衛「人はいなくなるのではなく、また会う時のためにひととき離れ離れになるだけなんだ。離れても、ずっと君の傍にいるよ」

秀吉「お前の花嫁姿を見たかったのだが…我ら三人、あの世で幸福が続く事を祝福しているぞ」


　三人がそれぞれAへの別れの言葉を告げた時、Aは慈愛のこもった言葉に胸を打たれ、涙が溢れ出た――。

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