【テニプリ】白色マーガレット part.3【丸井ブン太】【幸村精市】

桃色　1輪目（丸井ルート） ページ2

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　私は誰が好きなのか、自問自答し続けていた。


　"幸村君のこと、好きじゃないよ"


　私は今までに二度、この言葉を口にした。

　一度目はとても辛かった。想いを否定すると、余計に溢れ出した。

　二度目はついさっきだった。今回、辛さに代わったのは――懐かしさだった。
　それは、私の中で幸村君への恋心は、もう思い出になっているということを表していた。


「あずさ……」

　放課後の調理室で、隣で手を動かす彼女に話しかける。

　最初は視線を手元に向けたまま何気ない返事をした彼女だったが、真剣な空気に気が付いて手を止めた。

「答え、出たんだね」

　あずさの柔らかい視線に包まれる。
　去年、この視線に羨ましさを感じたことが、今となってはいい思い出になっている。

「私、ブン太が好き」

　声に出すと、想いは強くなる。胸の奥が、ぽかぽかと陽だまりのように明るい。

「じゃあ、ちゃんと言わなくちゃだめだよ。今度はAが素直になる番だからね」

「うん……そうだね」

　ちゃんと伝えられるだろうか。でも、伝えなければならない。彼はずっと待っていてくれた。誠意をもって答えを出さなければ。

「あたしも、ちゃんと精市と話さなきゃいけないな」

　ため息交じりの小さな声でそう言った彼女は、愁いを帯びた瞳で遠くを眺めていた。

　今の彼女にはどんな言葉をかけても意味はない、そう感じた。

「頑張ってって言うのは変だけど、上手くいくように祈ってるから……」

　気の利いたことを言えない自分がもどかしい。

　少しの沈黙が流れた後、あずさは俯き加減に打ち明けた。

「あたしね、仁王君に相談に乗ってもらってんだ」

　藪から棒な話に戸惑いながら、彼女の次の言葉を聞いた。

「あいつね、あたしの思ってること、全部分かっちゃうの」

　彼女の表情に切なさが滲むのを見つめた。

「いきなり核心を突かれて、気付いたら心を開いてた。そしたら、自分の気持ちが仁王君に傾いてる気がして。正直、今でも自分の気持ちが分からない」

　仁王君のことは詳しくは知らないのだが、あずさの傷に漬け込み惑わせるような彼に怒りを感じた。

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