未来 ページ30
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「言っときますけど、物の例えとかそーいうんじゃないよ。リアルで真面目な話。
アナタの居ない人生なんて意味ないの。だから2人でさ。たとえ何年後の話だっていいじゃない。
この今が続く先の未来まで。我々一緒に歳をとってこーじゃないよ」
ダメだよ…
そんなこと言われたら…
私…もう…。
「……。ほんとに…？」
「ホント」
「私、ずっと…この手を取ったままいても…いいの…？」
「取ってなさいっつってんの。金輪際、離す必要ない。アナタが離されることもない」
「う…」
ああ…
私はいったい何を迷っていたんだろう……！
こくこくと頷くことしかできない私を抱き締めて、くはっと和也が笑う。
「…じゃあ、最後にもっかい訊きます。
今でもAは…オレに手を離してもらうべきじゃないかって…迷ってる？」
「ううん…」
驚くほど素直に言葉が零れ出た。
「この手が離れた時のことなんて、もう考えられない。
たとえ何があっても…どんなに遠くに居たとしても、私の居場所は和也の傍。…だから」
「……」
背中に廻されている腕に力が込め直される。
「…私の事情で、ごめんなさい。
和也の手を取ったまま、私…向こうに…行くね」
涙をこらえてそう言うと、
「いーよ」と、潤んだ瞳で即答してきた和也に、グッと頭を掻き抱かれた。
耳たぶに触れた唇が、強く熱く、囁く。
「やってやろーじゃないよ2人で…。遠距離だって何だってさ…」
「…うん」
そうだね。
この今が続く先の未来を信じよう。
遠く距離が離れても、和也の手を離さずに歩いてゆく。
私たちの未来…
なんて幸せな言葉だろう。
「私も…ほんとはね、ずっと…」
こみ上げてくる感情。
悲しくないのにまた鼻がツンとしてきた。
だけど…
涙より先に、今この気持ちを和也に伝えておきたいよ。
「ずっと、未来が欲しかったの…」
「A…」
いつまでも傍に居たい…
和也と手を取り合って生きてゆきたい…って。
本当はわかっていたのに、私は確かめることもせずに望めないと決めつけて…
心に蓋をして、怖くて開けることもしないまま…。
でもね、今なら素直に言える。
「未来が欲しい。
私も、和也と手を取り合って一緒に歩いてゆける、和也と同じ未来が欲しい―――――」
よかった…
いつか覚めてしまう夢だなんて、もう言い聞かせなくていい…
嬉しくて。
力が抜けると、涙が一気にまた溢れ出た。
＋＋＋
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
