シワくちゃ ページ29
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『見たい』って、いったい…何を…？
「先のことなんて誰もわかんない。だけど今のAがどーいう人間なのか、オレちゃーんと知ってるよ」
「和也…」
「そりゃ人間の中身だっていろいろで、時間が経てば外側の変化と共に変わる部分もあんのかもしんない。だけど、一番奥の芯の部分…人間性みたいなとこって簡単には変わんないワケじゃん。
で、その中身ってのが、その人の外側に出るって言うじゃない？だから、更にもっとずーっと経って白髪でシワくちゃな歳になったとしても、AはAだからさー…」
和也が、胸に押し当てた私の泣き顔を覗き込む。
シワくちゃばーちゃんのAはどんなかなー…
おどけた口調で興味深げに眺められたかと思うと、ぶふっとまた笑われて。
「見てみたいなー。
オレだってその頃にはシワくちゃのじーちゃんなんだから、Aだっておんなじように歳をとってなきゃ不公平じゃないよ。
ってことで、すっげー楽しみにしてますから(笑)」
「……」
「オレも見せたげるよ。
だから、アナタも白髪でシワくちゃのA、オレだけに見せて」
「……。なっ…なによう……」
悔しくて口を尖らせては見たものの、泣きたくないのにまた涙が溢れて、喜んでいいのか怒っていいのかわからない。
そんな私をまだ抱き込んで。
和也が耳元で笑う。
「オレにとっちゃ唯一無二なんだからさ…」
うう…
頬を髪に摺り寄せて囁かれた言葉はどこまでも甘くて…
困った…
ますます涙が止まらないよ。
「ずっと離さないっつったじゃん。
この先ずっと。じーちゃんばーちゃんになっても。
オレにはAしか居ないってのに、さっきの話オレがじ−ちゃんになったらアナタ、オレのこと見捨てるつもりなの？え？ひどくない？」
そんな！あり得ないよ！と大きく首を横に振ると、
よし！言ったからね！とばかりに、強く強くきゅーっときつく抱き締められた。
だって…
見捨てるなんて、万が一にもない。
むしろそれは…
欲しいと願ってはいけないのだと思い込んでいて…
だけど…
本当は願ってやまなかった――――――――…
「…自信持ちなさいよ。怖がんなくていい。この先の未来を信じなさいって」
「この先の…未来…」
「そ。オマエとオレがこれから創ってく未来。
オレらの未来、肝心のオレらが信じなきゃどーするよ」
私たちが創ってゆく…
私たちの…未来…。
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作者名：kico
| 作成日時：2019年5月30日 12時
