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地下駐車場のゲートを抜けると、和也の車は、目の前でエンジンをかけて待ってくれていた。
周りに誰も居ないことを確認して駆け寄り、濃い目のスモークを貼った後ろのドアを素早く開ける。
和也の車に乗せてもらうのは、お正月以来かな。
お邪魔しまーす…と後部座席に滑り込むと、くはっと苦笑いが聞こえてきた。
「だからー、アナタさー、いい加減にその“お邪魔します”ってのやめなさいよ(笑)」
「ごめん(笑)、あまり乗せてもらうことがないから、いつもつい出ちゃって…」
「…で？忘れ物ない？」
「大丈夫！」
「じゃ、行きますか」
「うん」
車は、私たちを乗せて、静かに動き始めた。
＋＋＋
セキュリティ完備の地下駐車場を出て、大通りをまっすぐに進んでいく。
通勤が電車と地下鉄ばかりで、運転免許すら持っていない私には、道路のことはさっぱりわからない。
目的地は和也が知っているから、いつもお任せだ。
部屋と同じでシンプルな車内は、いつ乗っても変わらない。
BGMは後輩さんたちの少し前のアルバム。
いま流れているのは、最近、和也がよく部屋で流して一緒に口ずさんでいるキラキラした王道のアイドルソング。
「これ…和也のお気に入りの曲だよね」
「お、よく知ってんね(笑)」
わかるよ。いつも唄ってるもん。
「私も好きだな、この曲…」
和也がフッ…と笑って、少しだけボリュームを上げた。
サビのフレーズが耳に気持ちいい。
「んー、今んトコとか、すげーいいんだよなー…」
ハンドルを指でトントンと叩き、リズムを刻みながら、和也がいつものように口ずさみ始めた。
ああ…いいな、この感じ。
「うん…分かる気がする…」
そう呟くと、目を閉じて和也の声に耳を傾けた。
和也の声で紡がれていく歌。
静かに静かに私の心の奥に響いてくる。
後輩くんたちの唄っているこの曲が好きなのは、ホントだよ。
だけどね。
実は、こうして一緒に被せてくる和也のこの鼻歌が、もっと好き。
声質は高めなのに、なぜかちょっとだけ低く心に響いて聴こえる和也の甘い歌声が、すごく好き。
ドラマチックなメロディライン。
ロマンチックな歌詞。
大好きな人の大好きな歌声。
目を開けてスモーク越しにそっと外を見てみると、日差しが暖かくて眩しくて、気持ちいい。
ああ、なんだか今日はすごく贅沢な気分。
もうこれだけで、すごく幸せ。
そう言ったら…和也は笑うかな…？
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kico(プロフ) - ゆうきさん» 初めまして。自己満足で書いてきた勝手な妄想ですが楽しんで頂けたのなら嬉しいです。もう新しいお話は書きませんが、いつかどこかで何かのご縁があった時には♪どのお話にも愛だけは目いっぱい籠めて書いてきました。最期まで読んでくださってありがとうございました^^ (2020年10月12日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 初めて送ります…ウラつく読者デビューは、この作品でした。とても楽しく読ませて貰いました。もっと読みたいなあと言うのが正直な気持ちです。 (2020年10月9日 20時) (レス) id: 62321c58f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kico
| 作成日時：2016年3月26日 12時
