【黄瀬涼太】星の座る場所 ★ ｱﾙﾌｧﾙﾄﾞ ★

◆薬は想う◆ ページ3

◆ ﾄﾞﾛｰｶﾞside ◆



「……ﾒﾃｵちゃん」

「ﾄﾞﾛｰｶﾞさん、話の途中で悪いけど…少しこの男、借りるわよ」

「…麻酔銃なんかで撃って、どうするつもりなのですか？」

ﾄﾞﾛｰｶﾞは、物に溢れた床に倒れる黄瀬とﾒﾃｵを交互に見た。

黄瀬は痛みに表情を歪ませて完全に気絶してしまっている。

ﾒﾃｵは、白い十字架模様が見える紺の軍服ﾜﾝﾋﾟｰｽを着て

片耳に銀のﾋﾟｱｽを飾っている男を撃った麻酔銃を右手にぶら下げながら

倒れる黄瀬を、少し睨む様に見つめて

ﾄﾞﾛｰｶﾞの部屋に入り、黄瀬の襟を掴んだ。

「……もう少し丁寧に扱ってあげたら？ﾒﾃｵちゃん、仮にも…」

「違うわ」

言おうとした言葉を遮られる。相変わらず人間との関係は進展させたくないらしい。

「……局長の命令、なのですか？」

「えぇ。赤司征十郎という観察対象者に計画を把握されたらしいの」

「…だから、予定より早く実験を行う、ですか？」

「そうよ」

橙色の長い髪が、ふわりと揺れた。

手入れしなくとも綺麗なその髪が、目を奪う程に美しい。

でもこれも全て、人工的に作られている。

その事を彼女自身は、どう想って今日まで生きてきたのだろうか

ﾒﾃｵは黄瀬を仰向けに寝かせ、両手首に手錠を嵌めると両足首を縄で縛った。





「彼が、ﾒﾃｵちゃんを、嫌いになると想定して従うの？」





作業をするﾒﾃｵの手が止まる。

その金の瞳は、先程とうって変わって物寂しそうに黄瀬を見つめた。

まるで我が子の為に身を遠ざける母親の様だ。

「……」

「…帰ってきた時から、ﾒﾃｵちゃん…とても優しい目をしてたのです」

「気のせいよ」

「そんな事ないのです。私がﾒﾃｵちゃんの事を知らないとでも？」

「……」

「…持っていくのはいいけど…あまり無茶しないで欲しい…です。確かに彼の為にはなるけど」

「……」

「ﾒﾃｵちゃんが彼に嫌われたら、悲しーーー」

「…変な事、言わないで」

背中に担ぐ。

ﾒﾃｵは温度の感じられない目で、ﾄﾞﾛｰｶﾞを見た。

「例の薬、お願いよ。もう少しで彼等に使う時が来る。準備万端で構えておいて」





ﾊﾟｽﾜｰﾄﾞを打ち込んで部屋を出ていく彼女を、ﾄﾞﾛｰｶﾞは悲しく見ていた。

運命は、残酷だ。

世界を滅ぼす優しい父と

想いを寄せても自分から別れを告げなければいけない男に

挟まれる機械の感情は、何の色をしているんだろう

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