89話。 ページ44
「Aが泣かないように、今度はリビングじゃなくてちゃんと玄関にしような」
「え、おどかさないって選択肢はないんですか?」
「うーん、おどかすの楽しいからなぁ…ごめんなぁ」
「…ふふっ、木吉先輩ってば今日謝ってばっかりです」
「ははっ、悪い悪い」
「もー、また謝ってる」
いつも通りの木吉先輩に、落ち着きが戻ってくる。
大丈夫、大丈夫
いくら私が泣いていたとはいえ、大我は私の嫌がることは絶対にしないはずだ。
「……そういえばA」
「うん?」
「今日は、」
「つーか疲れでひでぇ顔してんな。風呂入ってこいよ」
黒子の声で目線を木吉先輩から黒子へと移す。
しかし、何かを私に言おうとしたところで、その声はようやく口を開いた大我に遮られてしまった。
「え…、」
「おら、行ってこい。それ持っててやるから」
「う、うんわかった……ありがと」
何を言おうとしたんだろうと不思議に思いつつも、くまゴロウのぬいぐるみを預けてから、大我に背中を押され風呂場へと向かう。
そう、この時の私はまだ気づいていなかった。
何度も謝るわりに、木吉先輩が私の頭を撫でなかったこと。
黒子の声のトーンが先程とは全く違っていたこと。
……これが、今この瞬間大我にできる私への精一杯の優しさと気遣いだったことに。
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早乙女みんと(プロフ) - ユーリさん» ありがとうございます……!がんばります! (2018年4月16日 10時) (レス) id: 11c9dce08c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - 火神の主人公を想う優しさが良いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2018年3月6日 22時) (レス) id: adda87380c (このIDを非表示/違反報告)
早乙女みんと(プロフ) - 美咲さん» そんなに感情移入して読んでくださってありがとうございます……!がんばって書きます! (2018年1月31日 14時) (レス) id: 11c9dce08c (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - めちゃくちゃ面白くてヒロインちゃんの感情がすごく伝わってきて思わず泣いてしまいました。続きがすごくすごく気になるので、いつまでも待ってます! (2018年1月29日 18時) (レス) id: c52a9a0886 (このIDを非表示/違反報告)
千尋(プロフ) - 続編有り難うございます!応援してます!これからも頑張ってください(*'ω'*) (2015年11月8日 1時) (レス) id: fa40f0093b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早乙女みんと | 作成日時:2015年7月20日 23時