「今の僕にできること」...Yu-ta side ページ44
７月に入ってしばらくした時、珍しく日本にいる彼女の方から連絡が来た。
だけど、連絡をしてきたのは彼女ではなく同級生で……単刀直入に用件だけを聞かされた僕は、目の前が真っ白になったのを覚えている。
「明日カラ、マタ電波ノナイ場所ニナル。今日デ最後ダゾ」
「うん、分かった……」
あれから数日、数週間……時間を見つけては通話を繋げて、僕が一方的に喋る日々を過ごしていた。
返事は、未だに無い。
気付けば、数えて７月も終わろうとしている。
「それで、流石にまずい！と思って、引き返そうとしたんだけど」
《…………あぁ、死んだ》
「いや、生きてるから。…………え？」
不意に聞こえてきた声は、水分を失って枯れていた。
それでも僕には、それが彼女の声だという事が分かった。
不安は一気に安堵へと変わり、感情が爆発しそうになるのを必死に抑えて声を絞り出す。
……だけど、彼女からの反応はとても素っ気ないもので、瞬時に血の気が引いた。
“乙骨憂太”
僕の名前を呟いた彼女の様子は、去年の状態と非常に近くて……。
「ドウシタ乙骨？ ヒドイ顔シテルゾ」
「あ…………ごめんなさい」
彼女と“約束”を交わして通話を切った後、ミゲルさんの言葉にハッとなる。
「マサカ、例ノ彼女カ？」
「えっと……はい。…………」
ひたすらに思い出すのは、百鬼夜行の……夏油傑と呪術高専で戦った時に彼女が見せた｢黄泉｣の片鱗。
五条先生とも次元が違う、圧倒的な威圧感と気配……｢黄泉｣とは一体、何者なのか。
「俺ニハ｢黄泉｣ノ事ハ分カラナイ。ダケド、今スルベキ事ハ分カル。オ前モ、ソウダロウ？」
「…………ありがとう、ミゲルさん」
……そうだ、足を止めて考えているだけじゃ前には進めない。
僕は目先にある目的を果たすため、先を行くミゲルさんの背中を追いかけた。
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作者名：神屋之槭樹 | 作成日時：2023年4月16日 18時
