59話 体育祭当日 ページ10
6月18日体育祭当日
暑苦しい太陽が校庭の砂で反射して、蒸し上がりそうなくらいの朝
体育祭の開会式が始まった
私は内心ワクワクしながら、整列して地面に体育座りをしていた
今日は晴天。
雲ひとつない空
校長先生の話を聞きながら、そわそわして靴紐を結び直したりしてみて
ふと顔を上げると校舎のベランダからぶら下がったそれぞれのクラスの旗が光っていた
うむ。私たちのクラスが1番目立っている。
内緒で心の中でガッツポーズをしてよしよしと1人で勝手に縦に揺れる顎
「続きまして、選手宣誓!」
それまでぼーっとしていたのに、司会の体育祭実行委員の2年生の声に思わず顔を上げて
さらに続いた先輩の「1年B組、黄瀬涼太、2年C組、山田太郎」という声に過剰に反応する心臓
聞き慣れた名前に一瞬ドキッとしてしまった
その瞬間急にざわつく生徒たち
そこに現れたのは白いハチマキをして少し他の男子よりも背が高い彼だった
えっ、と私が声を漏らすのと同時に、彼は真っ直ぐに手を挙げ、マイク越しの声に負けない音量で大きく息を吸う
『宣誓ーーーっっっ!!!』
「僕たちーっ!!」「俺たちはーーーっ!!!」
その瞬間、ドッと笑いが起きて
「顔面に頼らず自分の足で優勝を勝ち取る努力をしーーーっ!!!」
「ふだんカッコつけられる場所がない帰宅部でも女子のハートを掴む努力をしーーっ!!!」
必死に叫ぶ彼らを見て、生徒からはさらに明るい声が上がった
「青春をするために入った高校で後悔しないために全力で足を動かしーっ!!」
「女の子を黄瀬に取られないためにかっこいい姿で全力を尽くすことを誓いますっっ!!!!!」
「実は今日誕生日ーっ!!1年B組ーっ!黄瀬涼太ーっ!!」
「2年C組ーっ!山田太郎ーっ!」
台風のような意味のわからない選手宣誓が終わり、黄瀬くんたちのお辞儀を眺めながらひとしきり笑い終わって声を整えて
それと同時に耳に入った、なにあれ、と笑う周りの女子たちの声に私も思わず笑みが溢れる
選手宣誓って男女でやるものじゃなかったっけw
「高校生男子の全力の叫び、ありがとうございました。」
笑いを堪えながら無理矢理進行する司会者に
会場からは絶え間なく笑い声が溢れかえっていた
さて、楽しい体育祭の始まりだ。
私もワクワクしながらハチマキを締め直した。
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時