黄瀬涼太は好きな子にアタックできません2 (ページ4)

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52話ページ4

Aside

リナは明日朝練があるからもう帰る、と教室を出てしまい、ひとりになってまた、ため息をひとつ。
夜の教室は正直嫌いじゃない
普段の騒がしい雰囲気とは正反対の物静かな感じ
一本の廊下に目をやれば、ライトをつけているのは私の教室だけで

なんだか、特別な感じがして。

旗をやりたいのももちろんだけど、それよりもこの青春な時間をどっぷり味わいたい気持ちが大きかった。

19:30、か

そろそろ帰らなければ、と思ったが、絵の具だらけのこのジャージでは帰れない
道具を片付けて、着替えて、準備して、

この先のことを考えるとやっぱりめんどくさくて

もう少しこのままでいっか、なんて思ったりして

ふと、こんな時横に黄瀬くんがいたら…なんて考えてしまう

フフ、と声に出して1人でニヤニヤして

馬鹿みたいだなぁと一人で大きくため息をついた

その瞬間誰も通らないはずの廊下を大きな影が横切って

一気に体が強張るのを全身で感じた

視界を横切った姿は、私がずっと心のどこかで期待をしていた彼で

心の正直な声に逆らわずに、私はガタッと立ち上がり廊下へと足を運ぶ

「き、黄瀬くん！」

私の声で振り返った彼は、部活の後で少し髪の毛が
湿っていて…
見慣れない私服のようなウェアで、タオルを頭にかけていた

高校一年生には見えない色気に正直クラクラきて、うるさく響く心臓に感情を支配される

「やっほ、何してんスか」

振り向いてこっちへ向かってくる彼に、「こっちのセリフだよ！！」と声を荒げながら私も自然と駆け寄った

高身長の彼をそっと見上げると、普段よりもなんとなく近い距離感にまた心臓が高鳴るのを感じる

タオルで影になる目が少し魅力的で…

「着替えようと思ったらジャージなくてさ、取りに来たッス」

疲れのせいなのかわからないけど、少しゆるゆると話しながらゆっくり瞬きをする黄瀬くんに、私はあっけなく心を掴まれた

それはわざとやってる？
私を落とそうとしてる？

「そっか、」

取りに来ただけだもんね、とわかりやすくシュンとした私に、黄瀬くんは「んー…。」と少し悩んだ声を出して

「着替えた後、旗、少し見てもいいスか？」

と、また、自分の髪の毛をくしゃくしゃしながら目を逸らしてそう言った

柄にもなく照れている様子の彼は
私が見たことのない表情をしていて
この顔を知っていることに優越感を感じる

「あ、うん！もちろん！！」

きっと今の私は最高にブサイクだ