76話 ページ27
順調に作業を進めていたら
『きーせーくーん!!!!』
と上から声がして、バスケ部みんなで上を見上げて
「おー、リナちゃーーん!」と叫びながら俺は彼女に手を振った
Aっちのおかげで、すっかりリナちゃんともお知り合いだ。
旗を下ろしているのか、ベランダに数人、女子がいる
あ、…Aっちだ。
なんだか、少し恥ずかしい気持ちになって咄嗟に顔を下げて
「なーにニヤニヤしてんだしばくぞ!」
そう威圧感のある声で俺に叫ぶ先輩だったが、怪我人&病人な俺に、流石に今日は蹴りは入れてこなかった
「それで、なんで彼女はバスケやめたんだ?」
テントを一通りばらし終わり、水筒から水を飲みながらそう問いかけてきた小堀先輩に「俺は、あんまりよく知らないッスけど…」と声を漏らす
本当は割と知ってるけど
でもそれを俺の口から言うのは違う気がして…俺は少し濁して顔をそらした
「あー、なんか、いじめがあったらしくて。」
って笠松先輩!!
俺がせっかくオブラートに包んだのにっっ!!
俺が睨みつけると笠松は、いや、ちがうか、と続けた
「あの中学な、結構強くて全国常連だったんだけどよ
いつかの大会で彼女のシュートが不調になって、負けちまって
そしたらそれが彼女のせい、ってなってちょっと嫌がらせみたいになって怪我までさせて。
まあー…ひどい話だよな。」
そう話す先輩の目は怒りに満ちていた。
「それは…チームではないな」
「間違いなく俺が見た海常女バスと戦ってた彼女は強かったし…、楽しそうにバスケしてたッス。…それを奪った同中のやつらの気がしれねぇっすわ…」
ギリ、と噛み締めた歯が鳴り響いた
この話は、俺も黒子っちから聞いていた話だ。
実際にどこを怪我したとか、どんな風に怪我したかなんて知らない。
ただ、彼女の楽しそうなバスケ姿を見て、俺も楽しいバスケを教えてあげたいって思った。
「たしかに、あのシュートのオチなさは慣れなんてもんじゃないすよね!!」
早川先輩の言う通りだ。
落ちる落ちないじゃない、正確そのものだった。
一体どんな練習をしたらあのシュート率が身につくのだろう。
「3年のマネージャーがな、そろそろ受験勉強で引退したいと言っていたんだ。だから…俺も白河に問いかけてみるよ」
もし、俺が彼女と同じチームで同じベンチで試合をすることができたら
俺は…
…バスケで彼女に何を伝えるだろうか
そんなことを考えて、水を飲んだ。
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時