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73話 ページ24

「え、」


夕陽と同化しそうな彼女の姿は、少し動揺していて

その姿を見て、そりゃそうだ、と胸が締め付けられた


その赤い顔は、夕日のせいスか?
それとも、Aっちも同じ気持ちってことスか?


どういう、意味、とぽろぽろ言葉を漏らす彼女から目を逸らさずに、俺は唇を噛んで彼女の元へ歩いた。



あー、ちっちぇ顔。
あー、細い腕
こんな小柄だったっけ
俺は抱きしめたい衝動を抑えて、握った右手を離さないようにもう一度握った

好きって言えたらどれだけ楽か

俺は後退りしそうなほど緊張した彼女の首に巻いてある青いハチマキの上から
白いハチマキを巻いてネクタイ結びをした

驚いて顔を上げるAっちの表情がとても色っぽくて

「えと、あの、」

普段では絶対にない顔の距離に、顔を赤らめてどもる姿が可愛くて

いつからこんなに好きだったのだろう、とこの感情を噛み締めた


そんなことを考え少し口角が緩んだ俺を見た彼女は
再び俺の唇を見て、少し唇をキュ、っとして、ふいっと目をそらした。









あー





俺、これやったッスね。







少し動揺気味のAっちの反応が、俺が何したかを教えてくれた



何やってんスか…


俺。


いくら寝ぼけてたとしても、まさかそんなことをしているとは思っていなくて

少し後悔しながら顔をそらした俺に、彼女は口を開いた

「き、黄瀬くんは…そうやって、いろんな女の子に優しくして…」

少し、声が震えている

「わたしだけ、じゃなくて、きっと、他の子にもしてるからって、」と喋り続ける彼女の目線はだんだんと下がっていき


「好き、なのは…わたしだけ、だから…って思って、」

弱々しくそうつぶやいた彼女の言葉に、俺は思わず目を見開いた

彼女の口から確かに出た、好き、って言葉

今までいろんな女の子に言われてきたどの『好き』よりも嬉しくて

少し顔が緩んだことに気がつかなかった

「俺、女の子とこんな距離詰めたことないッスよ」

俺が少し、笑いながらそう言うと、彼女は顔を上げて


目があって、自然と笑顔になった。


「ハチマキ、大事にするね」

彼女が、洗わない、とぼそっと呟いたのを聞き逃さなかった俺は慌てて「洗って?!?いや、洗って?!」
と声を荒げて

ブフ、と笑うAっちをみて、俺もまた幸せになった。


今日は、最高の誕生日。

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設定タグ:黒子のバスケ , 黄瀬涼太 , 黄瀬   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時

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