71話 ページ22
慣れた手つきで、黄瀬くんの足をテーピングしていく先生は
「一応これで歩けるとは思うけど、帰り平気?家どこ?」と黄瀬くんを見上げながら心配そうな声を漏らして
そんな先生に、寮ッス、と答えた黄瀬くんに
なら平気ね!ともう片方の足をぺちんと叩いた。
「熱は、どう?」
すかさず容体を確認した私に、彼は「ん、寝たらめっちゃ楽になったッス。多分今はない」とつぶやいて自分の熱を確認しようとおでこを触った。
あ、と上を向きながら冷えピタの存在に気付いたようで
ペラペラと剥がしながら、ぬるくなってると笑った。
何気なく見つめあって2人で微笑みあうと、横で先生が「よし!」とこえをあげて立ち上がり
「ちょっと職員室に、黄瀬が目覚ましたって連絡しに行ってくるね。2人とも帰るかどうか決めといて〜」
と赤い廊下へ消えていく
そんな背中を見ながら「帰らない選択肢あるんスかね」と笑う黄瀬くんはいつも通りで。
さっきのこと、覚えてないのかなと横顔をみつめるわたしに、黄瀬くんは、ん?と顔を少し傾げる
「あ…、お誕生日おめでとう」
つい忘れていたことを思い出して、小さくつぶやく私に、「あーー、ありがとっス」と声を出して
だんだんさっきの会話を思い出したのか、私のハチマキをみて顔を背けた
「…優勝がプレゼントだよ」
ベッドに座ったまま、足をパタパタさせてつぶやいた私に、黄瀬くんは「まじっスか」とつぶやいて
あまり驚いていない姿に、まだ眠いのかなと余計な心配を働かせた
「6点差でB組に負けちゃった」
悔しいけど、悔しくない。だって黄瀬くんのクラスだから
「そっスか〜、みんなに会えてないなぁ結局」
優しい声でつぶやいてらはは、と笑って黄瀬くんは天井を見上がる黄瀬くんに
私は、あと…と続けて口を開いた
「ハチマキ、受け取ってないよ」
そう言えば、付き合ってないよ、と伝わるだろうと思った。
「あー、厳密に言えば…、返した、だけど」
みんないたし、断れない感じだったから…とモゴモゴ喋っているのもきこえているだろうか。
そんな私の言葉に黄瀬くんは、黙ったまま目を逸らして、
少し照れた顔で、よかった、と口にした。
ん?
よかった?
ふとさっきの唇の感触を思い出して、私もブワッと顔が赤くなる
ガララッ
「お前らー、帰るか?『帰りますっっっ!!!!』
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時