68話 ページ19
Aside
『俺のハチマキ、もらってくれないかな』
ほとんどの人が帰り、もう数人しか残っていない教室。
その言葉が頭の中をぐるぐるして。
恋愛感情ではない何かで、心臓が爆発しそうだった。
公開告白なんてされたの初めてで、
どうしていいかわかんなくて、
リナに助け求めたくても、リナはクラスの集団にはいなくて。
まだ鞄はあるし、きっと先輩たちとでもどこかで喋っているのだろう。
どうして、私なんかを好きになってくれたんだろう。
まだ教室にいる彼の背中を見て、少しため息をついた。
残りのクラスの女子たちまで、私たちに気を遣って、じゃあねと教室を出て行く
静まり返った教室
あぁ、しまった
ハチマキを返すには2人の空間を作るしかなかったけど、やっぱり気まずいし最高に逃げ出したい
そう思い、私は重い足を動かして、彼の元へ行った
「井上くんっ、、」
名前を呼ぶと、少し、傷ついた顔で私を見上げる彼。
「あの、えっと…うまくいえないんだけど、」
頭が真っ白で、うまく言葉が出てこない私は、静かに右手に眠る彼のハチマキを握った
「知ってるよ。早く保健室、行きたいよね。ごめん。」
そう謝りながら彼は私の右手からハチマキを奪い取って「俺、知ってる。放課後2人で教室で話してたことも。」と少し辛そうな顔をして
その言葉に、違う意味で顔が赤くなった
ほら、その顔、と言いたげに私の顔を見つめる彼
「そんな顔見ちゃったらさ、諦めるしかないじゃん?」
そう呟くと、少し寂しそうな顔をして
「参ったなぁ、受け取ってもらえるだけでよかったのに、まさか返されるなんて」
あはは、と彼は儚げに笑った
「ご、ごめんね。やっぱり私…」
『黄瀬くんが好きなの…。』
さっきのことを思い出して、また顔が赤くなって
彼の口から出た「誰のハチマキ?」なんて冷たい言葉で何を言っていいかわからなくなっちゃって
おどおどしながら言葉に詰まっていたら、彼の右手が私の頬に触れて…
親指で、下唇を撫でた。
ジワリと触られたところが熱くなる
な、なに、してるの、
手が熱い、熱…あるんじゃ…
私の目をまっすぐに見つめる彼の目は、どこか遠くを見つめていて
「あの、違くて…」
俺だけを見て、そう言っているような気がして…
だんだんと近づく彼の瞳を余裕のないまま見つめていたら
彼の親指が離れ
熱くなった私の唇に
そっと柔らかい唇が触れた。
心が、キュン、と跳ねた。
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時