67話 ページ18
「あんだけスポーツできたら、ま、モテるだろーな。」
顔も悪くねぇし、と立ちながら続ける先輩を見つめて
俺は小さく「相手とか、わかんないッスよね…」とつぶやいた
そんなこと、先輩が知るはずないのに。
笠松先輩はまた大きなため息をついて、「告白してぇならお前もすればいいじゃねぇか」と呆れた声を漏らしながら俺の方を向いた
少しニヤッとしているのは気のせいだろうか。
言い返せず少し下を向いて黙ってしまう俺の元へ、優しく近づく先輩に胸を締め付けられるような感覚がして
「あんだけ女キャーキャー騒がしといて、自分の好きな人にはアタックできません。って、なめてんのかゴラ」
そのまま俺を元気づけるように髪をわしゃわしゃと撫でた
その瞬間
ガララッ
ドアが勢いよく開いた音がして
肩を上下させて、着替えもせず体育着で、ポニーテールの女の子が立っていた。
タイミング…。
「黄瀬くん、お待たせ、、」
汗ばんだおでこを拭いて、熱い息吐いて
そんなに急がなくても、俺はどこにも行かないのに
「おぉ、白河。じゃあおれ行くわ」
先輩は自分の鞄を持って、Aっちの元へ歩いて行き、「悪りぃ白河。俺全部黄瀬に喋っちまったわ」と肩に手を置いた
じゃ、と悪びれる素振りもなく先輩は歩いて行き、ぴしゃん、とドアが閉まる音が響く
先輩の言葉にわかりやすく固まる彼女を見て、何かドス黒い感情が滲み出る
あー、なんか今はあんま、顔見たくないッスね
「えっと、…足、大丈夫?」
そう言って歩いてきた彼女の首には青いハチマキ。
それ、誰のッスか?
また、意識が朦朧としてきた
って、都合良すぎッスかね
「ん、足もなんスけど、熱中症らしくて…、かなりだるいんスわ」
こんな状況で笑顔を作れるほど俺も大人じゃない。
そっか、と俺の寝ているベッドに腰掛けたAっちに無性に触れたくなって
俺は白くなる視界の中で、彼女の髪の毛に触れた
ふぇっ?と照れたような顔をして、俺を見つめる黒い瞳
「砂埃で髪の毛汚いから、あんまり触らない方が…」
そう呟くAっちはもう、誰かの彼女?
何も考えず、するすると手を滑らせてハチマキを触る
ドロドロの感情とともに意識が、遠のいていくのを感じた
「これ、誰にもらったんスか」
口から出た声は自分でも驚くほど、冷たくて
目も合わせないでおどおどしながら
あの、違くてって
そう喋る口を、塞いでやりたい
あーーー、頭いてぇ
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時