66話 ページ17
ふと目を開けると白い天井
視界の端に見えるのはカーテンレール
と、青いジャージ姿の背中。
どれくらい時間が経っただろうか。
俺はまだ少し痛む膝を曲げて、体を起き上がらせた
「お、起きたか。」
そう言って俺を見つめるのは見慣れた無愛想な顔で
俺は思わず声を上げた
「笠松先輩!?!?!?」
やれやれ、と言いたげな先輩は俺の鞄を持ち上げて、俺の方へ歩いてきて
ほらよ、と言いながら俺の寝ているベットの近くの椅子へ座った
「お前、足もおかしかったけど熱中症気味だったらしいぞ」
そう言われてみると、たしかに顔が火が出るほど暑く、意識も朦朧としている。
あれ、でもそういえば鞄はAっちが持ってくるって話じゃ…
そう心の中で呟いたつもりが、口に出ていたようで
小さくため息をついた笠松先輩が口を開いた
「あんまお前にいうべきじゃないかもしれないけどなぁ…」
一瞬目を合わせて視線を逸らして
「あいつ、教室で公開告白されたらしくて」
と、優しくつぶやくように俺に告げた
その言葉を思わず繰り返して声に出し、それと同時に朦朧としていた意識が一気に冷めていくのを感じる
あぁ、と視線を下に向けた先輩は、ゆっくりと話し始めた
「俺、帰りが混むのも嫌だから先に帰ろうって思って、早めに支度して階段おりてたんだけどよ…」
先輩は俺に全て話してくれた。
階段を降りている時、一年の教室がやけに騒がしくて
気になって階段から少し顔を出したら、教室の外にたくさんのギャラリー、教室の中に男1人が待ってたんだって
階段のそばにAっちが不穏な顔で立っていて、先輩を見つけてすぐに「あ、黄瀬くんが足怪我して保健室にいるので、カバン頼めませんか」って頼んできたらしい
たしかに人がいなくなる前に俺の教室で俺の荷物をAっちがまとめてたら、そりゃちょっと問題ッスね
そのあと、クラスの女子がAっちをみつけて、教室へ導いたって
「俺が黄瀬のクラスに足を踏み入れたときに、隣のクラスからすんげえ悲鳴きこえてよ。全部理解したわ」
少し神妙な顔をしながら先輩の話を聞いていた俺を見て、先輩は少し呆れた声を漏らした
「まだ付き合ってなかったんだなお前ら」
「つ、つきあう!?!?何言ってんスか!!!」
咄嗟に否定した言葉は見事にひっくり返り、そんな俺を見てさらにニヤつく先輩は
「まぁー、黄瀬がこんなに恋愛下手だと思わなかったぜ」とつぶやいて俺の背中を叩いた
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作者名:りん | 作成日時:2020年10月21日 5時