黄瀬涼太は好きな子にアタックできません2 (ページ1)

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49話ページ1

黄瀬side

ガチャ

見慣れた廊下を横目に、自分の部屋に足を進めていく

俺は自分の部屋の鍵を開けてブレザーを脱ぎ、どさっと音を立ててネクタイも緩めないままベッドに倒れ込んだ

『付き合ってない』

そんな当たり前のことだけど、仲がいいと思っていたからこそ少し胸が痛んだりして

明るい蛍光灯から目を隠すように目を肘で覆った俺は、そのまま大きなため息をついた

なんでこんなに好きなんだろう

ふと目を閉じると、井上ってやつと仲良く話すAっちが脳裏に浮かんで
隣のクラスだからこそ見えてなかったそういう部分が、すごく気になる自分が嫌になる

「ダッセェ、俺」

一丁前に嫉妬して

自分のせいで傷つけて

いっそのこと好きだと伝えられたらどれほど楽か

そんなものはただの夢物語に過ぎないッスけどね

Aside

『ごめん、気づいたら寝ちゃってて今起きた！これリレーの順番ッス！口外禁止でよろしく』

黄瀬くんからのメッセージで頬を緩めた私は、ベッドの上で寝返りを打つ

黄瀬くんも今ベッドの上にいるのだろうか
そんなことを考えて熱くなった頬を誤魔化すように
わたしは指を滑らせた

『ありがとう、送っておくね！』

おやすみ、と付け足そうと思ったけど自分から会話終わらせるのは少し悔しくて
あわよくばもっと話せないかな、とそんなことを考えてしまっていら自分がいる

『C組の旗はいつ完成予定なんスか？』

そんな心も見透かされていたのか、はたまた偶然か
彼からのメッセージにまた胸が熱くなって

突然来た予想外な返答に思わず口角が上がった

『クラスのみんなの手形つけて、終わりになると思う！本番に間に合うかな笑』なんて、スタンプをつけてみたりして。

すると私が送った瞬間に表示された既読の文字で
我慢できなくなった私はもう一度寝返りを打った

『帰宅部そんなに多くないのに大変っスね、お疲れ様』

練習試合でだいぶ心が縮まったと思ったけど、今はリレーという共通点しかなくて、学校で話したのも今日が本当に久しぶりだった

好きな人だからという理由で気軽に近づける相手ではないそんなことは分かっている

これからは旗づくりのために毎日学校に残らなければならない

正直めんどくさいことだけど、黄瀬くんが学校にいるから少し頑張れたりするんだよな

「あー、だめだ！寝よ！！」

『ありがとう』と送ると、私は急な睡魔に逆らえなかった