黄瀬涼太は好きな子にアタックできません14 (ページ5)

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646話ページ5

「お疲れ様ッス」

その声に驚いて顔を上げると、私と同じ青いジャージを着たキャプテンが立っていて

彼は私の横にドカっと座ると、持っていたペットボトルの蓋を捻った

「黄瀬くん、疲れてるのに休まなくて大丈夫？？」

私の言葉に黄瀬くんはペットボトルからゆっくりと口を離し、いつも通りの人懐っこい笑顔で笑う

「だから今、休んでるッスけど？」

ペットボトルの蓋を閉めながら両手を広げる彼に、私も確かにと声を漏らしながら笑って

そんな彼と静かに廊下を見つめた

「まだみんな片付けとかバタバタしてるからさ、ちょっとトイレにでも行こうかなっておもって」

「じゃあなんで座ったの笑」

私のツッコミに彼は頬を膨らましながら「だから休憩ッスよ！」と声を荒げる

そんな彼を見て心配なさそうだな、と思った反面
ふと廊下へ視線を戻した黄瀬くんの冷たい瞳に
何か心の奥が凍った気がした

「あーあ、」

突然大きなため息と共に声を上げた黄瀬くんは、足を開いて姿勢を崩して「ダセェな、俺」と声を漏らし

そんな彼をただ見つめていたら、彼は少しの沈黙の後、今にも崩れそうな脆い声で淡々と話し続けた

「俺、笠松先輩みたいにみんなの前ではキャプテンとして胸張っていたかったんスけど」

「決勝目前にしてチームのみんなの前で泣くとか、結局高1の誠凜との練習試合からなんも変わってないッスね」

私が「そ、そんなこと…」と続けようと口を開いた時、黄瀬くんはガタッと音を立てて立ち上がり
私の方へ視線を向けた

その瞳はさっきとは違ってとても力強く、そして何か恐怖すら感じてしまうような野生のオーラを放っている

「俺、今日ちゃんと試合できてたッスか」

黄瀬くんの急な質問に私の口からは「へ、」と情けない声が漏れて
咄嗟に試合を思い返した私は慌てながら口を開いた

「できてた、っていうか、むしろすごく冷静で完璧に近かったように見えたけど」

私の言葉を聞いて静かに視線を逸らした黄瀬くんは、まだ少し不安そうな顔に戻って

「俺、…試合のことなんも覚えてないって言ったら

笑うッスか？」

また今にも崩れそうな脆い声でそう続けた