黄瀬涼太は好きな子にアタックできません14 (ページ17)

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658話ページ17

ふと離れた拳を見つめていたら青峰くんが目線をそらして
さつきちゃんも同じ方向を見たことに気がついた私もそっと視線をあげる

私の後ろだと気がついて振り向くとそこにはさっきと同じく目線を光らせた黄瀬くんが立っている

「お迎えだぜ、白河」

私が少し気まずそうに目線を逸らしたことに気がついた青峰くんは優しく私の背中を押して

私は思わず黄瀬くんの元へ足を二、三歩前へ出した

「A、もう、時間ッスから」

私は下を向いた私の視界に映るいつも通りの彼の靴を眺める方しかできなくて
そのまま小さく返事をする

すると後ろからドカドカと少し激しい足音がしたと思ったら
青峰くんは勢いよく黄瀬くんの整ったサラサラヘアをガシガシと崩しはじめた

怯んだ彼の靴に気がついて顔を上げると、そこには少し子供っぽく「やめっ、ちょ、！！」と慌てる黄瀬くんがいて

青峰くんは少し嬉しそうに「うぃ～」と茶化すと、ボサボサになった黄瀬くんの頭を満足そうに眺めた

「どーゆーつもりっスか！？試合前なんスけど！！」

「いやー、まじで人殺しそうな目してたからよ」

必死に髪の毛を直す黄瀬くんを横目に、青峰くんは頭をかきながら天井を見上げて

黄瀬くんは「はぁ？！」といつも通りの声を上げる

青峰くんは男にしか受け止められないような力で、黄瀬くんの首に後ろから掴みかかると
少し深みのある声で静かにつぶやいた

「優勝しろよ、りょーた」

その姿を見て心が苦しくなった私と目があった黄瀬くんは、小さく息を吸う

「言われなくてもするっスよ、サンキュッス、」

黄瀬くんの声は静かな廊下に響き渡り、そんな光景を眺めていたら青峰くんは静かに腕を解いた

彼はそのまままっすぐに私の元へ歩いてきたかと思ったら、何事もなかったかのように私の横をすり抜けていき

乾いた音と同時に私の背中に鋭い痛みが走った

バシッッ！！

「ったぁ！！」

背中を押さえながら振り向くとまたそこには満足そうに笑う青峰くんの顔があって

彼はニヤリと笑うと私に向かって力強くつぶやいた

「お前らのキャプテンを信じろ」