640話 ウィンターカップ ページ49
そしてやってきた俺たちの最後の戦い
ウィンターカップ
何度も何度も夢で戦って、その度に毎晩うなされていた
一回も負けることができない、その重荷が俺の体全てにのしかかっているようで
緊張で浅くなる呼吸に少し気を抜くと涙が出てしまいそうなストレス
俺は何も考える余裕などなく、頭の中を空っぽにするようにいつも通りランニングに向かった
幸い天気は良く、冬ということを忘れてしまいそうなほど眩しい青空が広がっている
少し足を動かせば、すれ違う小学生はみんなクリスマスの話をしていて
毎年この会話を聞いてやっとクリスマスが来たと実感する
1日たりとも努力を怠った日はない
ずっと頭の中は緊張と不安でいっぱいで、俺はパンクしそうな頭でいつも通りのコースを終えた
準備をして学校に向かって荷物の運び出しを手伝って、会場に着いた頃にはすでに部員が集まっていた
変わらないいつも通りの挨拶をするけれど、おそらく誰よりも緊張してるのは俺だ
俺のピリッとした緊張感が伝わったのか、部員たちも心なしか顔が怖いような気がする
いつもはこういう雰囲気を和ませてくれるAにも、今日は余裕がなさそうだった
午前の試合では秀徳が勝利を収めたのをしっかりと見届けて気を引き締め
そして秀徳の背中を追いかけるように俺たちも無事準決勝へ駒を進めた
大きな体育館ですれ違った彼らはもう高校1年の時の初々しさは一ミリも残ってなく、
少し髪の伸びた緑間っちと、逆にさっぱりとした高尾っちに少し威圧感を感じた
「夏から少しは成長したんだろうな」
すれ違いざまに吐き捨てた緑間っちの声は驚くほど冷たく、それはまるで今回のウィンターカップに特別な思い入れがあるようで
「…、そんなんほざいてられる余裕あるんスね。明日、その言葉後悔するッスよ」
思い入れが強いのなら俺だって負けてない、そう思った俺は、俺より少し背の高い緑間っちに負けない冷たい声で吐き捨てた
78人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りん | 作成日時:2021年2月25日 10時