637話 ページ46
部室に荷物を置いている時間も惜しくて、俺は直接向かった体育館のドアを勢いよく開けた
「あー、おつか………って、え?!?」
俺の髪からはぼたぼたと水滴が落ちていて、俺は湿った靴下を脱ぐために片足でジャンプしながら声の主を見上げる
「なーにやってんだよお前!!」
そこにはボールを握った尾川が立っていて
彼は俺に気づいたと同時にボールを適当にほっぽり
体育館の端に寄せてあった自分の荷物からタオルを取り出した
ぶっきらぼうな言葉で俺にタオルを投げつけると、その騒ぎにだんだん周りの後輩たちが気がつき始めて
自然と俺の周りに人が集まってきた
俺が受け取ったタオルに、眉間にシワを寄せると
尾川が「未使用だよ!!」と叫ぶ
その反応が見たかった俺は満足げに笑い声を上げるとその尾川のタオルで頭を拭きながら「ありがとう」と続けた
「キャプテン!お疲れ様です」
「キャプテン走ってきんすか!?」
「風邪ひきますよ!?シャワー行ってきたらどうっすか!」
ずっと持ったままだった俺の荷物を後輩が受け取ってくれて、そのほかの後輩も俺を心配して優しい声をかけてくれる
そんな姿に嬉しくなった俺は、「大丈夫大丈夫!」と返事をしながら濡れたジャージを脱ぎ捨てた
笠松先輩は、きっと大きな器の誰でも頼れる大先輩
俺の中ではキャプテンといえば笠松先輩だけど
もしかしたら、俺みたいに少し抜けたお気楽キャプテンがいてもいいのかもしれない
「あっ、キャプテン!?風邪ひきますよ!!」
「床濡らさないでくださいって!!」
背中に降りかかる後輩たちの声を無視しながら転がっていたボールを手に取って
俺は昔よりも自信がついた自分の背中を押すようにダンクシュートを決めた
リングから手を離すとそこには腕を組んだマネージャーが立っていて
だんだん自分の顔が青くなるのを感じたと同時に
「…濡れた服、、
…着替えてこーーーーーいっっ!!!!」
Aは俺を怒鳴りつけた
「ハ、ハイ!!!スミマセンデシタ!!!」
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作者名:りん | 作成日時:2021年2月25日 10時