625話 ページ34
「うひゃー、図書室もダメか」
わたしの隣で教科書を抱えたリナはそう呟くと同時に静かに廊下の壁へ寄りかかった
テスト前に大きな学内模試を控えた私たちは、毎日勉強に追われていて
昼休みに少しでも勉強をしようと静かな場所を探すのが日課になっている
しかしそれは一種の戦争で、少しでも授業が長引くとまず席が取れることはない
「うーん、今日山T授業長かったもんね、」
同じく教科書を抱えながらわたしが呟くと、彼女は小さくため息をついて「教室帰るかぁ」と口にした
昼休みが始まってすぐに勉強場所を確保しに行き、40分勉強して20分でご飯を食べるのを目標にしているわたしたちは
この40分をなるべく無駄にしたくなくて
焦る気持ちから歩く速度もどんどん速くなっていく
教室に戻るとすでに充満したお弁当の匂いと楽しげな声
それとは裏腹に目に映る景色では半分ほどが必死に勉強をしていて
私たちもその景色に混ざるように静かに席に着いた
私達が目指している大学は本当にレベルが高い
海常高校は頭が悪いわけではないけどすごくいいわけでもないため
こうやって本気でやってる人とそれ以外の人ですごく差ができてしまうことをすごく哀しく感じていた
幸いわたしの周りの人たちはみんな本気で勉強に取り組んでいる人たちで
私はそれに少し安心する
「黄瀬くんと尾川くんは戻ってないしどっか確保したっぽいね〜」
ガタンと椅子を激しく揺らして自分の席についたリナがそう口にして、
私はその先の隣に勝手に腰掛けて「だね〜」と返事をしながらノートを開いた
ウィンターカップはすぐそこまで迫っていて
そこに受験という大きな大きな重しがかかる
毎年先輩たちはこのハードな毎日をこなしていたのかと思うと正直頭が下がるし、なんだか氷室さん達のあの一件も納得してしまうような気がする
ふと顔を上げて横を見ると真剣なリナの顔があって
そんなリナの顔で秀徳の2人のことを思い出した
秀徳高校は都内でもトップレベルの成績を誇る学校で、そこに彼氏がいるというリナの株も上がってしまうほどかなり名高い学校で
そんな彼らが今どんな景色を見ているのかふと気になった私は思わず手を止めてしまった
夏に、冬はどんな気持ちでいられるだろうと思っていたけれど
月日の流れは本当にあっという間で
私の中ではあの時と何も変わっていない焦燥感に駆られた
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作者名:りん | 作成日時:2021年2月25日 10時