黄瀬涼太は好きな子にアタックできません13 (ページ3)

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594話ページ3

「…自分の、バスケ、？」

思わず繰り返した俺に、彼女は「そう！」と口を開く

綺麗な金髪ポニーテールをゆらしながら天井を見上げたアレックスさんは「今のお前でもここでは十分なレベルだ」と声を上げ

「…でも、それだと多分バスケが楽しくなくなる」と呟きながら静かに立ち上がった

「上だけ追いかけて、もがくようなバスケだけでは一流の選手にはなれない」

「…だから、自分のバスケを見つけて、それからまた私たちとバスケをしよう」

俺の目を見つめる青い瞳は、長年のバスケの経験からなのか、それとも女の勘なのか…

俺は何故か、全てを見透かされているようなそんな気分になった

「…っ、わり、黄瀬、待たせたな」

「タイガ！！」

上半身裸でタオルで体を拭きながらロッカールームに顔を出した火神に、アレックスさんは恥じらう様子もなく

逆に火神っちは「アレックス！？なんでここにいんだよ！！」と慌てていた

アメリカに来て、1週間が経って
人生においての大きな分かれ目に立っていた俺にとっては
全てが刺激的だった

何をしてもオープンな社会性、フレンドリーな仲間、日本とは違う良さがあって日本にも違う良さがある

留学は思い描いていた素敵なことばかりではないし、俺にだって足りてない部分がたくさんある

でも、本当に来てよかった、そう思える1週間だった

火神っちの家で過ごす日々はとても居心地が良く、寮だからって理由でご飯も紛れてタダ飯をいただいて

石畳でするランニングの辛さやストリートバスケの無限の可能性を知った

「黄瀬？おい、俺もう寝るけど」

火神っちの部屋の大きな窓から見える夜景は
日本の都会みたいにゴリゴリキラキラしたものではないけど

「あ、ごめ、俺ももう布団入るッスよ」

俺はきっと、この景色を一生忘れない