589話 ページ47
バテそうな暑さの中、前髪を崩したくない意思とは裏腹に止めどなく流れる汗をタオルで拭った
授業は相変わらずサッカーで、私は何もすることがなくただコートに突っ立って石を蹴飛ばしている
すると後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえて、それと同時に私の横を隣のチームのボールが転がっていった
「わりぃ!!」
小走りでボールを追いかけて足で止め、それを彼らの方へ思いっきり蹴飛ばす
「あ」
そんなロングパスがうまく決まるはずもなく、結果的に余計に走らせることになった彼らに、私は大声でごめんと叫んだ
サッカーの授業は退屈で、それは黄瀬くんがいないからなのかもともとサッカーが嫌いだからかわからないけれど
夢を見ているようなそんな気持ちだった
隣のコートで試合をする男子たちの背中を眺めて
そんな背中が黄瀬くんと重なって思わず目を擦る
ついに幻覚まで見始めたか…、、
私も末期だな、と思いながら自分のコートに視線を投げたところで試合終了の笛がなった
結果的に私は数えるほどしかボールに触れず、女子はみんな前髪と日焼けを気にして真面目に授業をやらなかった為1-1の引き分け
相変わらず熱血な先生の挨拶とともにチャイムが鳴り、私は水道へ足を運んで蛇口を捻った
ジョボジョボと涼しげな音が流れ、それとは正反対の日光を背中に浴びる
ゴクリゴクリと音を立てて水分を補給して、私は蛇口を捻りながら他の女子と話していたリナに手を振った
いつも通り2人で肩を並べてたわいもない話をしながら更衣室に戻り、棚に置いてある自分の袋に手をかける
「めっちゃ暑くね?暑いよね?暑いわ」とバテ気味なリナに、「3段活用かよ」とツッコミをして
プチプチと制服のブラウスにボタンをかけた
「Aちゃん、黄瀬くんいないのにいつも通りなんだね」
ふと隣からそんな声が聞こえて、私は思わず「えっそう?!」と声を上げる
そんな私に、彼女は「うん、離れてても深い絆みたいなのがあるんだね〜」とニヤニヤしながら体育着袋の紐を締めた
「ないないない、笑」と笑って誤魔化しても彼女はずっと口角をあげたままで、最後に軽く私とリナに手を振って更衣室を後にした
それと同時に私も制服に着替え終わり、思わずため息を漏らしながら袋の紐を引っ張って
そんな私の姿を見たリナは私の汗まみれの背中をバシィ!っと叩いて「そう見えてるってよ」とつぶやいた
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時