547話 ページ5
夜空を照らしていた花火も火薬の匂いとともに儚く散り、夏の蒸し暑い空気と虫の声が響くなか、Aと共に帰路についた
みんなには2人で帰りたいと無理を言って2人にしてもらって
花火が終わった人混みを避けて裏道で帰ることにした
街灯が俺らを照らして、彼女の普段に比べて小さな歩幅に気を使いながら歩く道
「…2年、経ったんだね」
沈黙を先に破ったのはAだった
さっきまでのみんなとの会話のボリュームではなく、2人で話す時の気の抜けた喋り方
そんな彼女のギャップに頬を緩めつつ、俺は「ん、…早かったけど、…色々あったッスね」と照れ笑いした
自然と距離が縮まり、なんとなく触れ合う手
「インターハイで忙しくてそれどころじゃなかったけど、…記念日だったんだね」
そうつぶやいた彼女は軽く俺の方を見て、手のひらをぎゅっとにぎった
「確かに、…俺も忙しくて忘れてた」
俺も彼女の方を眺めながら笑って、ふと忘れてたなんて酷いことを言ったことを後悔してすぐに小さくごめんとつぶやく
その声にAが「大丈夫、私も忘れてたから笑」と吹き出して
2人でわかりやすく声を揃えて笑った
「これからもよろしくね」
この先たくさんの不安が待ってることを知っている
全部俺が苦しめてることも知ってる
だからそれを超えられるくらいの幸せを彼女に届けよう
その想いを込めた俺の愛の言葉に、彼女も少し照れながら「こちらこそ、こんな私でよければ」と笑った
「何言ってんスか、ほんと」
俺にはAしかいねぇッスよ
そう続けようとしたところを彼女に「だって」と遮られて
咄嗟に反応して見下ろすと、彼女は下を向いたまま「黄瀬くん…は、かっこいいし、誰が見ても完璧で、きっと女の子にも困らないし、」とまたよくわからないことをベラベラと並べ始めた
俺がイケメンなことなんて知ってるし、ルックスもいいこと知ってる
そんなの当たり前じゃないスか
色々頭の中でごちゃごちゃ考えて、何を言おうかと悩んだけれど
「あのさぁ!!!」
それを全てかき消すように俺は彼女のつむじに
「Aが自分のこと否定するって、それ俺の好きな人否定してるってことだから!!!間接的に俺のこと否定してることになるから!!!!」
そう吐き捨てた
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作者名:りん | 作成日時:2021年1月28日 16時