492話 ページ1
ガコン
重々しい音を立てて落ちてきたペットボトルを拾おうと屈んで
扉に手をかけると、キィと歯が浮くような音がたった
表彰式が終わり、俺たちはまたカップを手にすることはできなかった
試合中は死ぬほど悔しくて、嫌な気持ちがぐるぐるしていた俺の頭の中も
驚くほどスッキリしていた。
下手だから、実力が足りなかったから負けたわけじゃない
今ならはっきりわかる
きっと、あいつらのタイミングだったんだ
そう言い聞かせて自販機に背を向け
プチチと音を立ててペットボトルのキャップを捻り咥えたその時
ピッ…
ガコン
後ろから自販機を使う音が聞こえて、思わず振り向いてしまった
もうすっかり暗くなった外から月の光を差し込むガラス張りの壁
「…よ、」
俺に挨拶をしてペットボトルを取るために屈んだ高尾は、俺と目を合わせることはなかった
「どーもッス」
高尾は勝ったはずなのに俺の言葉にあまり嬉しそうじゃなく
試合の余韻に浸っている様子もなかった
「随分、…お疲れみたいッスね?」
今までなら負けた相手となんか会いたくない、そう思っていたのに
今日はなぜだか、高尾と少し話したい、そんな気分だった
高尾はフハッと軽く笑いながらペットボトルのキャップを捻り、「まーな」と少し鼻声でつぶやいて水を口に流し込んだ
俺は月明かりに照らされたベンチに足を運び、高尾の目を見て「隣、すわんねーッスか?」と軽く誘ってみた
すると影になってあまり見えない高尾の、鼻で笑う声だけが聞こえて
「んじゃ、お言葉に甘えて」と言いながら座った高尾を見て、俺も腰を下ろした
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りん(プロフ) - zhenyangjingkouさん» ドキドキだなんて…嬉しいです( ; ; )温かいお言葉ありがとうございます( ; ; ) (2021年1月25日 18時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - Mさん» いつもいつもいつもいつもありがとうございます( ; ; )( ; ; )( ; ; )これからも末長くよろしくです (2021年1月25日 18時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
zhenyangjingkou(プロフ) - いつも愉しく作品を読まさせて頂いております。こちらの作品は面白く、ドキドキするところが多いのでいつも読んでいます。これからも頑張ってください!! (2021年1月24日 10時) (レス) id: 6cb8df7d81 (このIDを非表示/違反報告)
M - 更新再開、嬉しいです!まだ読み続けてますからね!頑張ってください! (2021年1月23日 19時) (レス) id: 7323c34b15 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ゆまさん» わぁぁ嬉しいです( ; ; )最近忙しくてゴミ更新だったんですけど、今日からまた爆速になるのでご安心くださいっっ!!!! (2021年1月21日 11時) (レス) id: 6b9a318112 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りん | 作成日時:2020年12月17日 7時