切り取られた奇跡 [末ズ] ２

暖かい世界 ページ2

・・・ここか。

○○さんの喫茶店の近くにある高層マンション。
こんなとこいったいどんな人が住んでんだろってランニング中も見上げたりしてた。
まさか、こうやって中に入ることがあるなんて、思いもしなかったけど。

入ってすぐに、あるパネルに、手渡されたメモに書いてある番号を打ち込む。

『はい。○○ですっ。どちら様ですか？』

少し高めの少年の声がする。

「あっ。えっと、○○です。」

『・・・えっ。ああっ！○くんだ！
ちょっと待ってくださいね。』

ああ。と、返事は聞こえただろうか？ブチッと音がするほど、勢いよくインターフォンは切られた。

しばらくして、奥の方に見えるエレベーターから、パジャマ姿にパーカーを羽織った和があらわれ、嬉しそうに駆け寄ってきた。

「どうしたの？よく家わかりましたね。」

と、微笑み見上げてくるこの少年に、不覚にも可愛いと感じてしまう。

「○さんに教えてもらった。
和。これ、誕生日おめでとう。」

金なんか無かったから、その辺に咲いていた道端の花を失敬してきた。

こんな金持ちだとは思わなかった。

「いらねぇよな？わりぃ。金ねぇから、
こんなもんになっちまった。」

俺の声に和は、ふるふると首を横にふり、

「ううん。嬉しいです！
お花なんて、もらったことないや。」

と言って、いとおしそうに顔を近づけ、そっと花の薫りを吸い込んでいた。

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