15.繋げる距離 ページ16
いつまで経っても返事がないので、そおっとドアを開ければ閉めきられて真っ暗な部屋の中に、こんもりと布団団子ができているベッド
「なんだ、寝てるのか」
って、いやなんだってなんだ?別にいいじゃないか。寝てたら、あの可愛くない言葉の数々も聞かなくて済むし……
さっきから誰にいってるんだろう、自分……。そう思いながら、そっとベッド脇に腰を下ろす
頭から布団を被っているため、寝ていることしかわからない。だが、体調不良と言えど、季節は夏。いくらなんでも熱中症になるんじゃないかと、少し迷いながら布団をめくる
まだ熱が高いのか呼吸が荒いが、ぐっすりとあどけない寝顔を晒す幼馴染に安心する。汗で前髪が額に張り付いている
やっぱり、熱が籠っていたのだとわかり、とりあえず布団を彼女のお腹辺りまで下げる。そっと額に手を当てると、ん、と身じろぐA
ぎくりと体を強張らせる。ゆっくりと開かれた目はしばらく宙をさまよう
「りょーた……?」
「ちょっと届け物があっただけっすよ」
舌たらずな拙い口調。何より、何年ぶりに呼ばれた名前に心臓が跳ねる
いつも可愛くない、可愛くないと言ってる割に自分も口を開けば素直じゃないなとため息をつく。というか、何故か見つめてくる幼馴染に何もしていないのに居たたまれなくなる
じーっと見てくる幼馴染の視線に耐え切れず、そろそろお暇しようかと腰をあげれば、弱々しく制服の袖を掴まれる
驚いてAを見れば、悲しそうな表情で、しかも目には涙の膜を張らせてこっちを見ていた
「行かないで」
「はっ?」
「いっちゃやっ」
やっとか何歳児っすかという言葉は飲み込む。それよりも、泣きそうなAに胸が締め付けられる
ぎゅっと握ってはなさない手に、あー、もうっと思いながらまた腰を下ろし、袖を握っていた手を取り繋ぐ
「いかないっすよ、どこにも」
その言葉に安心したのか、へらりと笑ったAに今度は顔が熱くなる。やばい、うつったか……?
そう思ってもどこにも行かないと言った手前すぐに離すのも憚られ、Aが眠るまで繋いでやった
今思えば、簡単なことなのに
いつの間にか幼馴染の手を取るのも難しいくらい離れていた俺たちは、ずっとすれ違いを繰り返していた
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星蛍(プロフ) - せりさん» ごめんなさい!!まだ編集途中で10月に外しますので、少々お待ち下さいm(__)m (2018年9月28日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - 続編はパスワードつきなのですね…見る事は出来ないのでしょうか?とても面白いので続きが気になります (2018年9月27日 16時) (レス) id: 9c9e090c7f (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - きゅうさん» ありがとうございます! (2018年9月18日 7時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
きゅう - おもしろかったです! (2018年9月18日 5時) (レス) id: fb4f6b02b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年3月31日 14時