晴れ時々、かなり晴れ【逆先夏目】 (ページ6)

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6.脱毛ページ6

「プ。指毛生えてるヨ」
「ガチで死ねよお前レディに向かって言う言葉じゃないだろ！！！！！！！！！！！！！訴えるぞ！！」

　夏。言い換えれば、可愛い女の子にとって毎日地獄のような体毛処理との戦いが始まる季節である。

　Aも例外ではない。大小様々な顔の整ったアイドルたちに囲まれるからには、どれだけ彼らに気がないと言えど、不快なものを見せてしまうわけにはいかない。なにせ全員ツルツルなのだ。毎日必死に毛を剃り尽くし、保湿して、絶対に恥ずかしい思いをしないようにと、膝下や腕だけのよく見える範囲以外であっても、なるべく綺麗に保とうと日々の努力を積み重ねているのだ。

　しかしいくら頑張っても、人間全てが完璧にとはいかない。日曜日の夜、「明日の朝絶対指の毛剃らなきゃな」と思いながら寝て起きたら全てを忘れて登校してしまった。皮肉なことに忘れていたことにすら気付かず月曜日を過ごし、それを目ざとく逆先に見つけられてしまったというわけである。

　逆先は大層意地悪そうに、中指を立てるAをプププと笑った。

「大丈夫？ボクの腕触ル？ツルツルだヨ。Aと違っテ」
「キーーッ医療脱毛の案件来てたもんな！！！」
「え？もしかしてA、まだ体に毛が生えてるノ？そのまま体中が毛に覆われて猿人類とかに退化しちゃうんじゃなイ？大丈夫？クリニックの紹介クーポンあげようカ？」
「うぜ～～～～～～なんだお前ほんとに」

　Aの言う通り、逆先は首から下の無駄な体毛の一切が処理されている。彼の所属するSwitchのユニット衣装を見ればか分かるが、まさかあの衣装で脇毛をボーボーに生やして魔法をかけることはあるまい。Switchは全員キッチリ、上から下まで脱毛を完了しているのだ。

　対してAは、一般的な女子高生と言うべきか。剃刀負けしないように保湿に気を使ったり、そもそもの剃刀をやめて電気シェーバーにしてみたりと努力はしているのだ。しかし纏まった金が必要になる脱毛は、やはりまだ稼ぎのない彼女が手を出すには少し厳しい。
　逆先はそんなAが脱毛したがっていることを知っているから、夏になれば脱毛マウントを取るというわけである。つまり簡単に言えば最悪な男というわけ。

　因みに夢ノ咲学院のアイドルたちはほとんどの人間が脱毛を完了している。毛がない方が衣装も映えるし、なにより「あどけなさ」が出る。高校生のあどけなさというのは、商売として何物にも変え難いのだ。