晴れ時々、かなり晴れ【逆先夏目】 (ページ4)

今日:12 hit、昨日:12 hit、合計:11,135 hit

4.色水ページ4

「な、なつ。ンフ、夏目こっち向いてよ」
「何」
「んっふふふ、フ、ワハハハハ」
「黙れ」
「ひーっひひひひウフフフフ」

■

「えっごめんなに？朝からかなり我慢したけどもう聞いていい？ Aはなんでそんなずっと笑ってんの？近年稀に見る大爆笑だし逆先はなんでそんなぶすくれてるわけ？てかうるさいからAそろそろ静かにできない？」

　Aの隣に座っていた男子生徒がほとんどキレながら一息に言った。朝礼のときから二限の終わる今まで、暇さえあればAがンフフケケケワハハと笑い出すので、もうそろそろ堪忍袋の緒がプチンといきそうなレベルである。うるさいし、何より何が一体そこまで面白いのか気になる。あと純粋に気持ち悪めの笑い声が教室に響くと、こっちまで笑いそうになるし。

　Aはひいひいと目尻の涙を拭って隣の男子に向き直り、ごめんちょと頭を下げるが依然として笑いは続いたままだった。

「よく聞いてくれた、ンハハハ。あのね、こ、こいつね、朝の電車で女子高生に『逆先夏目ってミステリアスでかっこいいけど付き合う感じじゃないよね～』『わかるぅ、オフショットに写ってるあの色水もなに？て感じだし付き合うならマトモな人がいいかも色水くんは嫌だよねぇアハハ』とか言われてん、ンフ。言われてんの。い、色みダーーハッハッハッハッ」
「ほんとに死んでくれなイ」
「無理んふふふ色水ね色水。ワハハハ」

　教室の中で何人かがフッと笑って顔を背けた。
　色水。まあ確かに、あれは何も知らない人から見ればただの色水なのかも。周りの人間たちはあれが何に使われるのかとか、逆先がそれの調合に尽力していることなんてすぐに分かることだが。なるほど、ファンから見れば逆先はただ色水遊びをしている男に見えるらしかった。

　しかし逆先がこうも怒っているのは、電車で行きずりの女の子たちに色水と言われたからではない。全て、Aの大爆笑によって生じた不快感のためであった。

「いやほんとニ。うるさいヨ」
「ごめん色水くん(笑)」
「・・・」

　今の逆先の顔を絵文字で表すとしたら、最適なのは😅💢 である。満場一致。