晴れ時々、かなり晴れ【逆先夏目】 (ページ20)

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20.ショッピングモール-1 ページ20

秋のはじめ。夜になると半袖だけだと少し肌寒い、けれど日中はカーディガンを着るほどでもない季節に差しかかった。一応上着はスクバの中に入れて来ているけれど、今日はまだ暖かいから出番はなさそうだとAが思いつつ。

　逆先とAは地元のショッピングモールに来ていた。三者面談の期間なので授業は午前中で終わり、その日面談がない生徒はそのまま帰宅、もしくはユニット練習である。Switchは春川と青葉が揃って今日面談があるためオフにして、ついでに逆先と遊びたいAがプロデュースをお休みしたというわけである。
　因みに逆先は既に面談を終え、Aはあと来週の月曜日にある。どちらも素行にそれほど問題はないから、今後の教科選択であったり進路の話を軽くして終わりだろうとは思うけれど。

　午前中の授業終わりにそのまま来てしまったので、二人とも昼食がまだである。だからこうしてフードコートの案内板を見ているのだが、かれこれもう5分ほど決まらないまま唸っている。優柔不断なのはAの方である。

「え～石焼ビビンバも食べたいけどうどんも良いし…ガッツリ食べたいから定食系でもアリ」
「もうどれでも良いから早くしテ」
「ごめんてば～ …じゃあ海鮮丼！決まり！」
「はいはイ」

　平日の昼間遅い時間とはいえ大学生や子供連れのお母さんたちで賑わっている。タイミング良く空いていたテーブルに折り畳み傘を置いて確保し、二人は海鮮丼を買いに行った。Aはサーモン丼を、逆先はお店定番の海鮮八種丼を。呼び出しブザーをもらって席まで帰り、二人は一息ついた。

「今日なんか行きたいとこある？私無印行きたい、芋けんぴ買いたい」
「いいヨ。ボクは…ああ薬局かどこカ、シートパック買えそうなとこかナ」
「待って私もほしい、乾燥ヤバいよね最近口の周りカッサカサよ」
「それは普段の行いでショ、ちゃんとお風呂上がりに保湿してル？この前乳液とかもらってたよネ？」
「マミィがくれたやつでしょ～あれ勿体なすぎて使えてない」
「それの方が勿体ないんじゃないノ」

　握っていたブザーが鳴る。
　取ってくるからここで待ってたラ、と親切な逆先に甘えてAがテーブルで携帯を触っていれば。

「ここ座ってもいい？」

　向かい側に、自分の父親ほどの男が盆を持って立っていた。無精髭に汚れた眼鏡、服も上下スウェット。
　急なことに驚いたAは、珍しく初動が遅れた。