14.家族旅行-2：空港 ページ14
「沖縄のにおい！！！ 最高！！ もう東京になんて一生帰りたくない！！」
A家と逆先、満を持して那覇空港に到着。
今日までの夏休み、Aは一切の娯楽を排除して夏の課題を必死に進め、プロデュースをこなし、全ての不安要素を爆破して来た。旅行のためとあらば、実力行使すらも厭わない。
飛行機から一歩出れば熱気が体を包む。東京とは違った空気を目一杯吸い込めば、肺が沖縄の空気に満たされる。そうそう、これ。このために、毎日死ぬ気で頑張ったのである。
「ちょっとアンタ分かったから、お兄ちゃんと荷物取りに行ってて ママお手洗い行ってくるから」
「はーい。夏目！ 荷物とるって！」
「夏目くんじゃなくてアンタが！ するの！💢」
Aの兄。勿論だが逆先とも面識がある。とはいえ既に家を出て下宿している大学生なので、会うことは非常に少ないのだが。一人っ子の逆先のことはとてもよく可愛がっていて、果ては「お前(A)より逆先が弟に来てほしい」などと言う始末である。つまり逆先はA家の人間に大層可愛がられて生きているというわけ。
残念ながら今回は不在のAの父親は現在単身赴任中、なんと大阪にいるのである。朝、パパからは「みんな、楽しんできてね😘」とメッセージが入っていた。もうそろそろ、おじさんラインの年代になる。
「夏目〜あんたのスーツケースどんなのだっけ」
「シール貼ってあるから分かるヨ」
「いやだから何のシ〜〜〜ル…っえﾞ！？ え！？」
そんなことを言われても分からんだろ、と思ったのだが。
一目見て分かった。分からないはずがない。
ピンクと水色と白の可愛い丸いフォントで「うちらズッ友！」だとか「心友」だとかが書いてあるステッカー───これはAが作ったものである───であったり、他にもA兄が作った「焼肉定食」だとか「最凶」だとかのバカみたいなステッカーも貼ってある。
これ、大昔にAが祖父母に買ってもらった、自分で好きなシールが作れるオモチャで作ったステッカーたちである。作ったはいいが、大事にしすぎて自分では使わないからと逆先に押し付けたものであった。なんとまあ、こんなところで使われていたとは。
A兄も横から見て「うわ懐かしーー現存するんだそういうの」と感嘆の声を漏らした。
「てかステッカーとか貼りすぎでしょ、なにこのラインストーン 平成のギャルじゃん」
「それAが貼ったんだけド」
「ガチ？ センス悪」
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作者名：アボカドサラダ | 作成日時：2023年8月18日 21時
