晴れ時々、かなり晴れ【逆先夏目】 (ページ1)

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序ページ1

2年A組のAAがどんな女かと聞かれたら、大多数の人間が同じような内容を答える。
　声が大きくて、ゲラで、俺たちのプロデューサー。そして、やたらめったら逆先夏目と仲が良い、と。

　嫉妬深い男は「逆先はあの子を脅してるんだ」と言い、噂好きな女は「本当は付き合ってるらしいよ」と囁いた。
　しかしそのどれもが的外れな言葉で、それを聞いた二人はばかだねえと笑いあったものである。

　逆先夏目。夢ノ咲学院の二年生。アイドル。
　AA。こちらも夢ノ咲学院の二年生。プロデューサー。
　家はお互い徒歩五分の距離、最寄り駅を挟むようにして対になるように暮らしており、やろうと思えば夜中に待ち合わせて二人で落ち合うことだって可能である。

　しかしまあ残念ながら二人の関係はそう甘酸っぱいものではなく。どちらかというと、もっと青臭い───、一般的な高校生の恋をオレンジシャーベットと例えるなら、二人のそれはハッカ飴くらいである。そういう爽やかさのあるものだった。爽やかさというか、無駄な甘酸っぱさが取り除かれた、ポケットの中で溶けた飴のネチネチ具合に似ているというか。

　端的に言えば、二人は幼馴染なのである。高校生にもなった男女の幼馴染の程度なんて知れているだろうと推測するのが普通である。が、二人だけは本当の例外であった。

　クラスメイトに言わせてみれば、二人を一言で表すのならこれほど適当な言葉もないだろうと。

　───夫婦漫才。