【桃】帰り道歌を歌っていたら話しかけられたので今から逃げようと思う。

episode１９　誘い ページ22

「あのさ、今日の夜って空いてる？」

付き合ってる、とはいえ二人きりは恥ずかしい。

「空いてれば、一緒にご飯食べに行かない？」
『いいですよ。』

快くオッケーした。

だって食事代浮くじゃん。

「良かったぁ。奇麗な服着てきてね？」と言ってさとみさんは私に近づいてキスを落とした。
『…！？///』
「えぇ、二人きりになったらこーいうことするんじゃないの？違う？」

いや違いませんよ？

合ってますよ多分。

だって漫画とかでもあるあるですよね？！

さとみさんは仕事あるからと言ってここを出て行った。

でも私は付き合ってるけどキスに疎くて。

まだ唇に残った感覚を流し込もうとお茶を飲んだ。

感覚は消えた。

でもまだ、あのキスをした後のさとみさんの優しい声と顔は忘れられなくて顔を手で覆った。

『ずる過ぎる。』

一人呟いた。

販売課に戻るとここのフロアで働く人のほぼ全員が来ていた。

さとみさんに自己紹介して、と言われた。

久しぶりだなぁこんなの。と思いながら前に立った。

『デザイン課から移動してきました、灰咲Aです。まだ分からないことだらけですがこれからよろしくお願いします。』

パチパチ、と拍手が起こるとすぐに解散して各々が自分の机に戻った。

なんか、味気ないな。

こんなもんだとは思うけど、少し寂しかった。

「ごめんA。俺が仕事には迅速に取り組めって言っちゃってるから喋れないんだよ皆」
『はぁ、そうなんですね。じゃあ言えばいいじゃないですか？』
「言うのが簡単なら今困ってないもん。」

可愛い。

そんな会話をしていると私たちの会話を聞いていた女の人が言った。

「仲いいんですね！」
「そうでしょ？A可愛いから。」
『は…？』
何でそーいう事言うかなぁ。

他の人がこそこそ話している会話を聞くとこう言っていた。

「栢野さんがああやって笑うの珍しいよね」
受け入れてくれているようで安心した。

今日の仕事はあまり力を入れなかった。

何てったって今日の夜ご飯が楽しみだからね。

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