キミハカルマ （中）

高校生編 62 ページ14

神side


廉から連絡はこないまま数日。
夏休みに入ったとはいえ仕事はあるので、悶々としながら学校で仕事をこなしていた。



「ジン先生、お疲れ様です」
「お疲れ様です、中島先生」


男子校にそぐわない色気をふりまきながら、中島先生が隣の席に座る。


「平野のお兄さんて、芸能人のSHOだったんですね」
「ああ、そうか、中島先生今年からだから知らなかったんだ」
「学校騒然でした」


想像ができる。
話題のドラマと映画に出まくりの人気俳優が突然現れたら、男子だって好奇心が湧くもんな。


「俺、本物初めてみました」
「あはは」
「ディアブロ、かっこよかったな〜」


あ、SHOじゃなくて車の方ね。
アイツ、ディアブロ乗ってんのかよ。さすが芸能人。


「SHOもサングラスかけて、全身黒ずくめで、なんていうか、名前負けしてない存在感でしたよ」
「名前負け？」
「ディアブロって、悪魔って意味なんですよ？知りません？」


知りません、普通。


悪魔…ねぇ。


確かに俺にとっては悪魔だ。


「はぁ…」


そろそろ、向き合う時なんだろうな。


筋トレ全然間に合わなかったけど。








休憩時間に職員室を出て、屋上に向かう。
廉、ではなく紫耀の番号をタップする。
けど、都合よくは繋がらない。


仕事が終わり帰る途中、折り返しの電話があった。


「久しぶり」
『おう』


紫耀の沈んだ声。


『廉なら、今日そっちに戻るぞ。てか、もう戻ってるかもな』
「あっ、そう、なんだ」
『用ってそれだろ？』


間違ってない。
もう用はない。

でも、そういう問題でもない。


「…元気ないじゃん」
『忙しいからな』
「それだけじゃねーだろ」


高校以降、数えるくらいしか会ってないけど。親友だから、声を聞けばわかる。
疲れてる声なのか、落ち込んでる声なのかくらい。


「廉と…なんか話せた？」
『何も。俺は…一生、廉のことわかんねーらしい』


紫耀の声が震えてる。


『また、廉のこと頼むな』
「わかってる。てかさ、なんで廉をそっちに連れてったんだよ」


沈黙。


『…廉が約束破ったから』
「なんだそれ」



拗ねた子どもみたいな言い方に、苦笑してしまう。



「素直になれよ」
『素直じゃねーのは廉だし』



ああ、それもそうだなと思った。


廉だって、なかなかのブラコンだった。


思春期のせい、とばかり思ってたけど…


確かに拗れすぎか？


素直になれない理由が


他にもあったりするんだろうか…

高校生編 63→←高校生編 61

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す