22.助けて欲しい時に ページ24
-
時間は残酷なもので、窓辺でぼんやりとしていると、いつの間にかもう外は薄暗くなっていた。
「…千早、今日はひとりお客さんが入っているんだが…断りを入れるか?」
食事もとらずにぼんやりとしている私を心配して、楼主様がわざわざ部屋に声をかけに来た。
「…いえ…働けます。心配をかけてすみません」
…迷惑はかけられない。それに、これ以上考えすぎたら、もう動けなくなってしまいそうな気がした。
重い腰をあげて、なんとか身支度を整える。
今晩来るのは、よく来る馴染みのお客さんではないらしい。
登楼の時間になって、座敷の襖を開けると───
「…え…?」
そこには、不死川さんの姿があった。
目が合うと、ぷいっと目を逸らされる。
不死川さんの隣に座ると、芸者が三味線や太鼓を鳴らし、それに合わせて踊り出す。
「…なんか、すげェとこだな」
隣でぽろっと独り言が聞こえて、少し驚いた顔をしていた。
「…楽しんでいっておくんなんし」
微笑みながらそう声をかけると、廓言葉が気に入らないのか、不満そうな顔で「どうも」と呟いた。
そして不死川さんは近くの者に声を掛け、何かを頼んでいるようだった。
しばらく経つと、座敷に運ばれてきたのは、山ほどの豪華な料理。
しかも、私のものだけではなく、禿や新造たちの他の遊女の子のぶんまで。
びっくりして少し固まっていると、「腹減ってるなら食え」と横から声をかけられる。
あまり食欲はなかったけど、気遣いが心に染みて料理を口に運んだ。
ぼんやりと芸を見ている不死川さんの横顔が目に入る。
どうしてあなたは───助けて欲しいと思った時に来てくれるの?
思わずその横顔を見つめてしまう。
そしてそのままほとんど話すことなく、いつの間にか引けの時間になって、不死川さんは私の寝間へと通された。
-
242人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲羅(プロフ) - すごく面白いです!体調に気をつけて、更新頑張ってください! (4月19日 11時) (レス) id: cb3a3c8e5d (このIDを非表示/違反報告)
萌娜(プロフ) - かるぱすさん» コメントありがとうございます^^そう言っていただけると本当に嬉しいです…!もう少しで完結予定なので、最後までよろしくお願いします♡ (4月3日 11時) (レス) id: 8beddeaf96 (このIDを非表示/違反報告)
かるぱす - 初コメ失礼します!この作品すごく面白いです!更新待ってます! (3月31日 0時) (レス) @page22 id: 11d8e78453 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:萌娜 | 作成日時:2024年2月29日 17時