6.残念ガールと残念ファーザーの深夜 ページ8
「ただいまー」
その日の晩、
すっかり日も落ちて、皆寝静まった頃。
真っ暗になった部屋に野太い男の声が響いた。
その声を発した男はそろりそろりと足音をたてないように動き出す。
まずは脱いでいた上着をソファーに掛けて、
次に喉が乾いたのか冷蔵庫を開ける。
だがそこに男の求めた冷えたビールはない。
そのことに男はがっくりと肩を落としながら、
代わりにぬるいお茶を飲む。
そうして最後、眠る前に愛しの我が子達を一目見ようと"二人の"部屋に足を向ける。
最近"Aと翔"と話して無いな━━━━━━。
さぁもう寝ようか、とどこか名残惜しく思う気持ちを振り払って男は部屋からそっと出ていく。
直前に、
お父さん、と静かな声が後ろから聞こえてきた。
その声にAと翔の父、"
そうして弘樹の目はつい先程まで眠りに就いていた筈のAの姿を捉える。
「A………………。
起きてたのか」
驚きつつも久しぶりに愛しい娘と顔を見合わせて話が出来るという事に弘樹は喜びの色を隠せなかった。
Aと翔の母は二人が幼い頃に逝った。
急な事故で、Aも翔も酷く混乱した。
特に娘のAは酷い落ち込みようで、一時期食欲も失せていた。
だが日が二人を徐々に癒してくれたのか今やこんなにも元気に育っている。
だから。
だからこそ、そんな二人の父親である弘樹が自らの妻の死を嘆くことなど出来なかったのだ。
それからの弘樹はまるで人が変わったかのように仕事に打ち込み始めた。
勿論、子供二人が無事に暮らして行けるようにという理由だった。
が、それと同時に何処か妻のいない悲しみを必死に忘れようとしていたようでもあったのだ。
そんな父の様子にAと翔は何かを感じとったのか、二人はどんな苦しい状況下にあっても決して泣き言を言わなかった。
だがそれからだ。
父と子供達の間に、溝ができてしまったのは。
弘樹は仕事詰めで家にあまり帰らなくなったし、翔も部活の疲れか弘樹がたまに帰る頃にはもう既に眠っていた。
たまにこうやって話をするとしたら娘のAだけだ。
「お父さん。お帰りなさい」
だけれど弘樹にとって、お帰りなさいの一言で全てどうでもいいような気がしてくるのだから、困ったものだ。
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きゅー野郎(プロフ) - 泪×龍さん» コメント有難うございます!続編もきゅー野郎ワールド全開で頑張らせて頂きますね!続編も宜しくお願いします( ̄∇ ̄*)ゞ (2015年2月13日 18時) (レス) id: 043f89e5e4 (このIDを非表示/違反報告)
泪×龍(プロフ) - 続編頑張って下さい! (2015年2月13日 18時) (レス) id: 91c19ca637 (このIDを非表示/違反報告)
きゅー野郎(プロフ) - CubeSugarさん» コメント有難うございます!黒子君って何故か行動派なイメージがあります(笑)テスト期間と重なってて少しだけ更新出来ないかも知れませんが、頑張りますね(((o(*゚▽゚*)o))) (2015年2月12日 20時) (レス) id: 043f89e5e4 (このIDを非表示/違反報告)
CubeSugar - めちゃおもろいです!意外に行動派の黒子(笑)更新、頑張ってください! (2015年2月12日 17時) (レス) id: fc1804391b (このIDを非表示/違反報告)
きゅー野郎(プロフ) - ゆな♪さん» コメント嬉しいです!赤司君ですかー。楽しみにして頂けて有難いです! (2015年2月9日 19時) (レス) id: 043f89e5e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゅー野郎 | 作成日時:2015年1月3日 4時