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No.6 ページ6

―――ブチン。


私の中で、何かが切れた音がした。
もう止めようが無かった。


私はテレビを消し、その場に座り込んで泣いた。



出会った頃は、ポケモントレーナーとして過ごしているわけではない私と、ポケモン一筋の彼に共通点なんて無いと思っていた。


それでも、一緒にいて分かってきたのは、トレーナーとしてではなく、1人の人としての彼の側面。


どんな映画が好きで、どんな服が好みなのか。

夜型で朝に弱いけど、起き抜けのコーヒーでスイッチが入ること。

薄味よりも濃い味が好きなこと。

照れるとすぐバンダナをいじる癖。


多くの人が知らない彼を、たくさん見てきた。そんな彼を支えていけることが嬉しかったし、本当の彼を知っているのは私だけだ、なんてプライドまであった。


でも、どうやら私は勘違いをしていたみたいで。私が知る"彼"ではなく、ポケモンバトルに全てを捧げる彼こそが、"本当の彼"に他ならなかったのだ。


勿論、彼とルリナさんが恋仲であるはずはない。でも、強くて綺麗で、彼と同じ立場に立っている彼女の方が、少なくとも私よりも彼には相応しい気がした。



嗚咽を漏らす私の異変を敏感に察知したのか、机の上に置いていたモンスターボールが激しく揺れる。
コトン、と床に落ちた衝撃で飛び出したのは、10代の時からの相棒の1匹。


『ムクホーク……』


泣きながら名前を呼ぶと、ムクホークは辛そうな表情で私の背中を翼で包んだ。心配させてごめんね、と思う一方で涙は止まらない。


翼の温もりに体を預けて、私は泣きじゃくりながら声に出した。


『もう、嫌………ここに、居たくない』

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狼(ろん)(プロフ) - くずをさん» ありがとうございます、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも少しずつですが更新しますので、よければ是非ご覧ください! (2020年2月2日 23時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)
狼(ろん)(プロフ) - MOMOさん» ありがとうございます!なかなか更新できず、申し訳ありません…(汗)ゆっくりですが、これからも更新していくので、是非お付きあいください! (2020年2月2日 23時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)
くずを - 初見失礼します!あなた小説面白くて大好きですこれからも応援してます! (2020年1月30日 16時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
MOMO - 好きです!次の更新待ってます! (2020年1月30日 16時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
狼(ろん)(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます、気に入っていただけて嬉しいです!これからも、よろしければお付き合いください(*´ω`*) (2020年1月9日 16時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狼(ろん) | 作成日時:2019年12月28日 23時

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