No.29 ページ29
スモモちゃんと握手をして振り向いた途端、私はビブラーバの様子がおかしいことに気づいて、一気に背筋が凍った。
―先程の勝負で私が無理な指示を出したせいで、ケガをしてしまったのではないか。
真っ先にそんな考えが浮かび、慌てて地面に伏したまま動かないビブラーバに駆け寄る。
しかし、私がその傍らに辿り着く前に、
鋭い光が視界を覆った。
反射的に腕で顔を庇い、きつく目を閉じる。
ごう、と1度突風が吹いたかと思うと、次の瞬間には、辺りは水を打ったように静かになった。
もう何も起きない。
そう判断した私は顔を上げて――
言葉を失った。
尾が、随分長くなった。
翼も、見違えるほどに大きくなっている。
しっかりと地面をとらえている前足の先についた爪は、紛れもない、ドラゴンタイプのそれだった。
目と目が合う。
赤いレンズに守られた瞳。
その瞳が、静かな期待を込めた輝きを放ちながら、私をじっととらえている。
まばゆい光の中から現れたのは、
1匹の立派なフライゴンだった。
『……キバナ、?』
果たしてこれは夢か現か。
幻の中にいるかのような感覚の中で、問いかけるように発した声は掠れて震えてしまう。
しかしその響きを確かにとらえた目の前の竜は、みるみるうちに顔を綻ばせた。
大きく一声鳴いたかと思うと、たちまちブンブンと尾を揺らして頬擦りをしてくる。
……ああ、間違いない。
本当に、この子は強くなったのだ。
ついに、その姿を進化させるほどに。
出会ってからこの日までの日々が、走馬灯のように浮かんでは消える。
初めて私の腕に抱かれたときの、少し落ち着かないような表情。
ガラルで、シンオウに残してきた仲間たちを思って、どこか遠慮がちな接し方しかできなかった私にも、無邪気にすり寄ってきてくれたこと。
シンオウに来てからも変わらない、好奇心旺盛なきらきらした瞳。
ずっと前だけを見て、一緒に強くなろうとしてくれた姿。
私はわしゃわしゃとフライゴンの体を撫でてから、ギュッときつく抱きしめた。
言葉にして、手放しで褒めてやりたいと思う一方で、どうかすると泣いてしまいそうだった。
ぼやけてきた視界を、目を閉じて遮る。
(ありがとう、私と一緒にここまで来てくれて)
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狼(ろん)(プロフ) - くずをさん» ありがとうございます、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも少しずつですが更新しますので、よければ是非ご覧ください! (2020年2月2日 23時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)
狼(ろん)(プロフ) - MOMOさん» ありがとうございます!なかなか更新できず、申し訳ありません…(汗)ゆっくりですが、これからも更新していくので、是非お付きあいください! (2020年2月2日 23時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)
くずを - 初見失礼します!あなた小説面白くて大好きですこれからも応援してます! (2020年1月30日 16時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
MOMO - 好きです!次の更新待ってます! (2020年1月30日 16時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
狼(ろん)(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます、気に入っていただけて嬉しいです!これからも、よろしければお付き合いください(*´ω`*) (2020年1月9日 16時) (レス) id: 05bb7f03fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狼(ろん) | 作成日時:2019年12月28日 23時