【ポケモン剣盾】決戦は貴方と【キバナ】

No.20-side.K- ページ20

―――絶句した。



ガラルにいねぇだと？冗談じゃねぇ。んじゃ一体どこだって言うんだ。


あまりのショックに言葉を失う俺を知ってか知らずか、Aは淡々と続ける。



『どこにいるかは、教えられないわ。言えば、あなたはきっと無理してでも会いに来てくれるでしょう？

でも、ダメなの。私、あれから色々考えたけど、今はあなたには会えない』



ごめんなさい。そう言ったAの声は、最早俺の知っている声ではない。



「ちょっ……と、待てよ。全然、話が分かんねぇんだけど。会えねぇって、どういうことだよ！！」



先ほど振り切ったばかりの悪寒がたちまち背中を駆け上がってくる。嫌な汗が滲んで、スマホを持つ手が小刻みに震え始めた。


会えない、その言葉だけが脳内で何度も再生される。聞き間違いだと思い込むにはあまりにも鮮明過ぎたそのフレーズは、一瞬で俺の心を粉々にした。



「…もう、この先俺とは会わねぇって言うのか？こんな終わり方で！！頼む、せめてきちんと謝らせてくれ。話だけでもｯ、」


『待ってキバナ。ちゃんと聞いていた？』



最早こうなっては変な意地もプライドも要らないといよいよ焦る俺を、Aは変わらず冷静な口調で押しとどめる。


何言ってんだ。こっちはこんだけ動転してんだぞ。ちゃんと聞いていた？なんて、愚問すぎる。バッチリ聞こえてたに決まってんだろーが、ぜってぇ聞きたくなかったが。



「聞いたも何も！！」


『私、"今は"会えないって言ったのよ。』






さっきから混乱しっぱなしの思考回路が、改めて強調された「今は」というフレーズに呼応してピタリと停止した。


一瞬の静寂の後、再びゆっくりとアタマガ働き始める。


今は。


今は、ということは、いずれまた会えるっつーことか？


だとしても、それはいつなんだ。


俺は今すぐお前に会いてぇんだよ。





『今のままの私じゃ、あなたに会えないの。…でも、いつか。

どのくらいかかるかは分からないわ。でもいつか必ず、もう1度会いに行く。だから、それまでサヨナラよ』


「…んなの、おおそうかって受け入れられるかよ。いつになるかも分かんねぇって、」





やっとのことで絞り出した本音。
それを聞くと、Aは初めて笑った。呆れたように、少し困ったように。



『毎日、いつになるかも分からない帰りを、私に待たせていたのは誰かしら？』

No.21-side.K-→←No.19-side.K-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す