ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ 16

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「まあ…でも、Aの人生を狂わしちゃった責任はとってやろうかな。」

辺りは本当に暗くなってしまって、夜景がどんどん綺麗になっていくいい時間帯で、

私達はそれをぼんやり眺めながら、ずっとそんな話をしていた。

「ちゃんと、Aのことを幸せにしたいとは思ってる。
だけど今はまだ、そのやり方がよくわかんない。
とりあえず、Aのことを大切にして、いっぱい笑わせてあげたいな、とは思ってる。」

私も裕太くんのことを大切にしたいと思ってる。

裕太くんと同じで、やり方はくわからないけど。

「やってけそう？この国で。」

そう聞かれた私は、迷わず、

「うん。」

と答えた。

裕太くんと一緒なら、まあ、どうにかなるんじゃないかな。

心配性は日本に置いてきて、ここでの生活を思いっきり楽しもうと、今は思えるようになった。







シンガポール最後の夜、私達は窓から、いつまでも夜景を眺めていた。

「このホテル、傾いて設計されてんだよね。
その屋上に重い水のたっぷり詰まったプールが乗せられてるから、崩壊するかもとか言われてんだって。」

…全然、気付いてなかった。

確かに3つの建物の屋上に船型のプールを乗せるとか、よくバランスが保ててるなとは思ってたけど。

「本当に崩壊するの？」

「どうだろ。
屋上の船が落ちるんじゃないかとは言われてるけど。」

そんな話をしてる時の裕太くんは本当に楽しそうで。

つられて私も笑顔になってくる。









「じゃあ、このホテルから遠い所に部屋を借りよう。
落ちてきたプールの、巻き添えになりたくないから。」

そう言ったら、裕太くんは笑ってたけど、急に真顔になってこんなことを言い出す。

「Aはシンガポールに来たら仕事をするとか言ってたけど、本気？」

「もちろん。
だって暇じゃん。
こんな知り合いもいない国で、昼間はひとりきりなんて。」

「俺、思ったんだけど···。」

そう言いかけて裕太くんは、不自然に視線を落とした。

「もう、子ども作っちゃわない？
こっちに来たら、すぐにでも。」

子ども！？

だっていつも、結婚してしばらくは２人きりでいたい、とかって話してたじゃん。

「子どもは当分いらないって言ってなかった？」

「でもなんか、欲しくなった。
俺らの子ども、絶対に可愛いと思わない？」

そんなキラキラした目をして言わないでよ。

海外で出産と育児とか、ハードル高すぎるんだって！

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