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結果、あれほど恐れていたシンガポールは思ってたより快適だった。
こっちは家でごはんを作る人が少ないんだって。
朝食は外で食べるものだし、昼も夜も外食でOKらしい。
日系スーパーも見つけた!
だけど物価は高そう。
それに治安もいいし、街も綺麗だし。
言葉は…、まあ英語だからなんとかなりそうではある。
案外いけるかも。
シンガポールでの日々が過ぎるごとに、私はこの国がどんどん気に入っていった。
今夜はシンガポール最後の夜。
思い切って、例の屋上プールのあるマリーナベイサンズに泊まることにした。
昼間は混むかもしれないから、夕食時の18時過ぎに屋上プールへ。
こっちに来てからの裕太くんは、日本にいる時よりテンションが高い。
プールの端で、暮れていくシンガポールの景色を並んで眺めていた。
「来てみてよかった。」
そう呟くと、
「知ってる。」
裕太くんはそんな返しをしてくる。
「だんだんAの表情が明るくなってきたし、よく笑うようになってきたから。」
こちらを見もしないで答えてくる裕太くんが憎らしくて、その横顔に水をかけてやったら、ムッとした顔でようやくこちらを向いてくれた。
だけど負けず嫌いな彼は盛大に私に水をかけてくるから、しばらく水かけごっこが続いてしまい。
夕陽に照らされて一番美しいはずの風景を、私達は見逃すことになってしまった。
「もう日が暮れちゃったじゃん。」
唇を尖らせて、さっきと同じ姿勢で外を眺めてる裕太くんの、その横顔をただ眺めていた。
夜景なんか無視して。
「ねえ、幸せにしてくれる?」
不意に聞きたくなったその質問に、裕太くんは驚いたようにこちらを向く。
「裕太くんのせいで、けっこう人生狂わされちゃったんだけど。
本当なら私は、無難にどこかに内定をもらって就職して、ずっと東京に住んでたと思う。
職場で知り合った人とかと普通に恋愛をして、20代の後半くらいで結婚して、
子どもは2人くらいかな。
男の子と女の子。
で、ずっとその知らない誰かと穏やかな結婚生活を送るはずだったんだけど、私の予定では。」
ドヤ顔でそう言い切ったら、裕太くんは何故か呆れ顔で。
「そんな人生のどこが面白いわけ?
無難とか普通とか穏やかとか。」
「…安定してんじゃん。」
「まあね。
でも俺は、今の人生が気に入ってるけどね。
Aと出会ってなかったら今頃、Aが言うような無難な人生を送ってたと思う。」
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クッキーベル(プロフ) - 昨年のクリスマスからこの作品を今日までで一気読みさせていただきました!!すごく面白くて続きが気になります!!!更新大変だとは思いますが、これからも頑張ってください!!応援してます!! (2021年1月2日 19時) (レス) id: 456e770b4f (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 楽しみに更新待っていますね。^_^ (2020年7月28日 0時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
bakutan(プロフ) - こんばんは!この物語とても好きです!ゆっくりでも良いので更新再開してください!!楽しみに待ってます! (2020年6月3日 19時) (レス) id: dde750c273 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» こちらも大変お返事が遅くなりまして!こちらも読んでくださってるとは、ありがとうございます。こちらは更にのんびり更新でやってますが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - こんばんは!こちらも楽しみに読んでいます。めちゃくちゃ素の玉ちゃんが出てる感じでリアル感もあり楽しみです!ゆっくりご都合良い時に更新してくださいね^_^楽しみに待ってます。 (2020年1月25日 22時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月6日 21時