花朝月夕

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「世間ずれしてないＴ大女子と話すのは、新鮮で面白いだろうし、
自分の正体を知らないってのも、楽なんだと思う」

「それはわかってるよ」

「でもね、それだけだよ？
興味がなくなったら、もう終わり
私の言ってる意味、わかる？」

「…わかるけど」

「要するに北山くんは、Aに恋愛感情なんて持ってないってことだよ」

…あーあ、言っちゃった。

そんなの私だって、とっくに気づいてるよ。

「A、さっき寝てる北山くんに触ろうとしてたでしょ」

…やっぱ、気付かれてたか。

でも、朋が止めてくれてなかったら、本当に触っちゃってたかもしれない。

で、驚いた彼が目を覚まして、まるで汚い物でも見るような目で見られるのかな。

てか、それくらい徹底的に嫌われた方が、もう二度と会わなくてすむのに。









「Aが北山くんに会わないようにしてたっていう気持ちは、なんとなくわかる
あれ以上親しくなって、辛い思いしたくないからだよね？」

「…うん」

「今日で何回目なの？会うの」

「３回目」

「連絡先の交換は？」

「してないよ」

「しようって言われなかった？」

「うん」

「まあ、北山くんは慎重な人だから、２、３回会っただけの子に連絡先は聞かないとは思うけど
どうしてもAに連絡を取りたかったら、霞さんに聞けばなんとかなるわけじゃない？
でもそれをしてこなかったってことは、その程度の感情なんだよ
私の言ってる意味、わかるよね？」

理路整然と諭されて、私は黙って頷くことしかできなかった。

本当に朋の言う通りだから。

「朋、今日はありがとう
いきなり知らない集まりに付き合ってくれて、演技までしてもらって」

その言葉で、ようやく朋の表情が緩む。

「いいよ
私も今日はいいもの見させてもらったし」

「北山くんのこと？」

「そう
プライベートの北山くん、ヤバいよね
適度に緩んでて、表情が柔らかくて
しかも寝顔まで拝めるとは！
危うく私まで北山堕ちするとこだったわ」

「ヤバいでしょ？
ヤバいよね？」

「かなりヤバい
だからこそ心配
で、あさってどうすんの？」

…そうだった。

あさっての飲み会も誘われてるんだった。









「朋も一緒に行ってくれるなら」

本当は今日を最後にするべきなんだろうけど、変な欲が出た。

最後に、もう一度会いたい。

満足するまで彼を眺めて、それで終わりにしよう。

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